第183話


その灯かりに照らされて、それは存在感を放っていた。



「これ…もしかして…。」


俺は飴色に輝くラジオに触った。


「うん。」


ノエルは頷いた。


「このラジオが澄子さんとうちのじーちゃんを結びつけたんだよな。」


澄子さんがずっとこのラジオを大事にしていたことを思うと、胸が切なくなった。


「おばあちゃん、死ぬまでずっとこのラジオを大事にしていたの。おばあちゃんが生きてきて、一番幸せだった事と、一番辛かった事が、このラジオに詰まってるって言ってた。」


「そっか…。」


「このラジオを、乃海君のおじいさんに渡してくれないかな?」


「…わかった。じーちゃんに渡すよ。」


「ありがとう。」


月明かりにノエルの涙が光った。


俺はノエルの頬に手をあてた。


「おまえ、誰?」


突然ドアが開いて男が入ってきた。

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