第164話 トラクター王国の話4


 帝国に嫁ぐ日の朝、姫と兵士の面会は許されました。


兵士の監禁されている牢獄の重い鍵が開けられ、姫は中へ入っていきました。


そこには、拷問を受け変わり果てた兵士がいました。


「おお!なんてこと! 私のせいであなたがこんな目に合うなんて!」


姫はさめざめと泣きました。


「姫のせいではありません。どうか泣かないで。」


姫は懐からあるものを取り出しました。


それは四葉のクローバーのキーホルダーでした。


「姫、それは…。」


「私たちはこの世界で結ばれることが許されませんでした。だから私は私の想いをこのキーホルダーの中に閉じ込めたのです。あなたの鍵にこのキーホルダーを付けてください。私はいつもあなたのそばに居ます。」


「姫!」


二台はさめざめと泣きました。


「姫君、お時間です。」


看守がドアを開けて姫に告げた。


「いま、まいる。」


姫は王国の姫君の顔に戻り、毅然として王国の勤めを果たす為に出て行きました。


トラクター兵士は姫のキーホルダーをタイヤの間に握り締め、涙を流しながら姫君を見送りました。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る