第157話
いつも冷血な印象のこの人が、こんな人間的な感情を持っていた事に驚いた。
私と結婚したくて八方手を尽くして縁を繋いだという事はあまりに意外で、その事に関しては少し嬉しく思ったが、それでもこの人のことは愛していない。
これから先一緒にいてもその事は変わらないと思った。
「斉藤さん…ごめんなさい。それでも私は健二さんの事が好きです。この気持ちは変わらない。」
「…どうしても俺と結婚したくないという事?」
「ごめんなさい。」
「わかった。」
斉藤が私の気持ちを理解してくれた安堵と申し訳なさで涙が出た。
もしかしてこの人は、私が思っているほど冷たい人間じゃないのかもしれない、そんな気持ちになっていた。
しかしそれはつかの間、斉藤は間逆の事を言った。
「君は、俺と結婚するようになるさ。」
彼は私を横目で見ながらクックッと笑った。
その時はその意味さえわからなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます