第153話
「この国は負けるよ。頭のいいヤツはみんなわかってる。口に出せないだけなんだ。」
高橋さんは吐き捨てるように言った。
「でも、新聞では全戦全勝って言ってるわ。」
「隠してるだけさ。資源も枯渇してる。今まで猶予されていた学生すら動因されることになった。もう末期だよ。若い優秀な人材をどんどん戦場で死なせて、この国の未来はどうなるんだ?この国は本気で最後の一人になるまで戦って滅亡しようというのか?」
「高橋さんもそのうち招集がかかるの?」
「俺はこのばかげた戦争で死ぬ気なんか無いから、召集されにくい理系の大学に進んだんだ。そのうち戦争は終わる。その後のこの国を立て直したい。無駄死になんてしたくない。大丈夫、君を残してなんか逝くわけない。」
「健二さん、私には…。」
「そのことも…心配しないで。今は目立ったことが出来ないけど、俺が卒業したら絶対に君のご両親を説得するから。」
私は不安でたまらなかったけれども、健二さんがそう断言してくれるので少し気持ちが落ち着いた。
健二さんはそんな私をギュっと抱きしめた。
幸せな気持ちで家に帰ると、門の前で軍服を着ている男の人が立っていた。
男の人は私を見下すように睨んでいた。
その男は私の家庭教師の安藤雅人先生だった!
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