第151話


「母さん!気がついたの?」


父と母が病室に入ってきた。


祖母はみんなに今までのお礼とお別れの言葉を告げ、最後に私を見て優しく微笑みかけた。そして静かに息を引き取った。


「おばあちゃん…。」


涙を流す私を母はそっと抱きしめた。


父は肩を震わせて泣いていた。


祖母の人生は幕を閉じた。


辛い事の方が多かった人生だったと思う。


しかし祖母は自分の境遇をしっかり受け止め必死に生きてきた。


だからこそ、最後に祖母の心残りの和夫さんに会わせてあげたかった。




和夫さんはまだ元気でいるのかな。


どこに住んで何をしているんだろう。


おばあちゃんは、あなたのことをいまだに想いながら亡くなりました。



病院の外に出ると、もう薄暗くなっていて霧雨が降っていた。


霧雨の奥に、祖母の残像が見えるような気がした。


「ノエル、あなたは…自分の気持ちを大事にして生きてね…。」


耳元で祖母の声がした。


辺りを見回しても誰もいなかったが、確かに祖母が私の耳元でそうささやいた。


「おばあちゃん。私の事、見守っててね。」


止めどなく涙が溢れた。


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