第149話


「ノエルちゃん!」


突然私を呼ぶ声で我に返った。


目の前に家庭教師の安藤先生がいた。


「ここを通りかかったら君の姿が見えて。何してるの?」


安藤先生は呆れたような目で私を見ている。


「ちょっと散歩を…。」


なんと言えばいいか考えているところにスマホが鳴った。


電話は母からで祖母の容態が急変したとの知らせだった。


私は手が震えて目の前が真っ白になった。


「俺、車だから連れて行くよ。」


安藤先生は私の手を取って連れて行こうとした。


その時、急に胸がズキンとした。


何かが私を引きとめた。


どうしてもこの場を離れてはいけないような気がしていた。


「何ボーっとしてんの!行くよ!」


安藤先生に言われてその場を立ち去った。


帰り際に後ろを振り返ると、同い年くらいの男の子がいた。


私は何故か強烈な後悔を感じながら安藤先生の車で祖母の病院へ向かった。




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