第148話


 そんな事を考えながら、次の宝箱の座標が示している図書館に来た。


図書館の看板のところに宝箱は隠されてあった。


私はまたノートに名前を書いてキーホルダーを入れた。


なんとなくその場を離れがたくて、そばのベンチに座った。


目の前の海から気持ちのいい風が吹いていた。


その一帯はレトロな建物が並んでいて、現代じゃないような昔にタイムトリップしたような気分になる。


私は目を閉じてその時代に思いを馳せた。


閉じた目の奥に、昔の街並みが映ってきた。


柳並木の大通りに路面電車が走っている。


華やかな商店街。


その角には大きな書店。


街の外れの川沿いにたつ人。


後姿。


大きな背中。


この人だ!


私を呼ぶ声は、この人の声だ!


私は直感的にそう思った。


そして私はこの人のことを昔から知っている。


誰だっただろう?


何故思い出せないんだろう?


そしてその人は私の手を引き寄せて抱きしめた。


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