第136話


 父はすぐに救急車を呼んで祖母は病院に運ばれた。


もともと心臓が悪かったのが悪化したらしい。


幸い一命は取り留めたが、そのまま入院することになった。


私は祖母がこのままいなくなってしまうのではないかと思うと、怖くてたまらなくなった。


いつも私の心配や恐怖心を拭い去ってくれていた祖母。


どんなに不安な時でも祖母のそばに居れば安心できた。


祖母は私の安全地帯だった。


「おばあちゃん…。」


眠っている祖母の顔を見ていると、涙が止まらなかった。


「ノエル、先生も大丈夫とおっしゃって下さっているんだから、一度家に帰ろう。おまえも休まなくちゃ体が持たない。」


父は私にそう言った。


「嫌だ。私はおばあちゃんが目を覚ますまでここにいる。」


父と母は困ったように顔を見合わせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る