第116話


「あら、この子は…。自分が一番辛い思いをしてるのに、お母さんとお父さんの心配をしてるの?」


祖母は冗談まじりに笑って言った。


そっか、一番辛いのは私か…。


「おばあちゃん、私、バレエ、やめてもいいかな?ほんと言うと、そんなに好きじゃないの…。」


「あら、ピアノじゃなくてバレエなのね?」


「うん。」


「そうね…、好きでもない事はするもんじゃないわ。子供ってのはね、ある程度の我がままは許されるものなのよ。」


おばあちゃんは私にそう言うと、遠い目をしてどこでもないどこかを見ていた。

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