第117話


その後、私は母にバレエをやめたいと言った。


母も私の才能の無さに薄々気付いていたので、しょうがなく認めてくれた。


その代わりに塾に行かないかと薦めてきた。


私立の小学校を受験しましょうと言ってきたのだ。


正直私は、小学校は近所の公立の学校に行きたいと思っていた。


幼稚園も家から離れたところにあるキリスト教系のセレブっぽい園に通っていたので近所に友達がいなかった。


お友達と遊ぶには、まず母親同士がアポを取り合い、それから日程や場所を決めて、オシャレなお菓子やおつまみなどを持ち寄り、親は子供たちを見守りつつ横でママ会を楽しむ、そのそばの限られた空間で子供たちを遊ばせるという感じだった。


だから小学校は家の校区内の公立小学校に通って、近所に友達を作って、一緒に帰ったり自分達だけで遊んだりしたかったのだ。


子供達だけで探検をしたり宝探しをしたりスリルを味わってみたかった。


そんなささやかな私の望みも、期待に満ち溢れる母親の威圧感の下では消えうせてしまうのだった。


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