第103話 もう一つの人知れない恋の話22


和夫がもう少ししたら帰ってくるからと引き止める良子だったが、澄子は突然来てしまった事を詫び、自分と話しをしてくれた良子にお礼をし、深々と頭を下げて家を後にした。


 澄子は来た道を駅へ向かって歩いていった。


涙が止めどなく溢れてくるが、心はとても温かかった。


良子の人柄に触れて、心の傷が癒されたのかもしれないと思った。


駅で切符を買い、プラットホームで電車を待った。


この街へは、もう来ることは無いだろう。


和夫と良子に為にも、自分はここへはもう来てはいけないと思った。



 電車がゆっくりホームへ入ってきた。


ドアが開いて中へ入ろうとした時、視線を感じて振り返ると、和夫が立っていた。


和夫はちょうどその電車でこの街に帰ってきたところだった。


「澄ちゃん!」


和夫は叫んだ。

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