第99話 もう一つの人知れない恋の話18


良子は慌てて奥から手ぬぐいを持ってきて澄子に渡し、むせび泣く澄子の背中をさすった。


澄子が落ち着くのを待ってからまた話を続けた。


「和夫さん、ほとんど部屋から出なくて、たまに出たかと思えば酒屋に行ってお酒をたくさん買い込んで、またしばらく篭るような生活が続いていたんです。うちの親ったら口が悪いから、良子、ちょっと見といで! 死んでるかもしれないよ! なんて言うもんだから、私もなんだか心配になっちゃって、ある日和夫さんの様子を見に行ったんですよ。そしたらまあ酷い状態で。男前が台無しで…。あんた!何があったか知らないが、いい加減にしなさいよっ!って、私、叱り飛ばしたんですよ。」


良子がコントみたいに大げさな身振り手振りで言うので、澄子は思わずクスっと笑った。


良子もそんな澄子を見て少し安心した。


「でね、その時、勝手ながら申し訳ないのだけど、澄子さんとの一部始終を吐き出させたんですよ…。」



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