第98話 もう一つの人知れない恋の話17
「澄子さんはご存知無いと思うのですが、私は和夫さんが学生の時に下宿していたアパートの大家の娘なんです。和夫さんがうちに入居の挨拶をしに来た時、私は一目惚れしてしまって…。でも、私、こんな風で器量が良くないでしょ?これでも自分ってものをわきまえてるから下手な夢なんてこれっぽっちも持たないようにしてたの。だから、和夫さんの姿を見かけるだけで満足だったんです。そしてしばらくして澄子さんと和夫さんが一緒にいる所をよく見かけるようになって、悲しい気持ちはもちろんあったんですけどね…美しいなぁって。並んで歩く二人を見ると、ほんとに絵になるなぁって、本心でそう思っていたんですよ。」
良子は澄子に微笑みかけた。
庭からそよ風が入って、二人の頬を優しく撫でた。
「…ある時から和夫さんの生活が荒れて…事情を聞いて納得したんですけど。でも私はきっと澄子さんにはそうしなければならない事情があるんだと思ってました。私、こんなですけど一応女ですからね。」
良子の言葉を聞いて、澄子の目から大粒の涙が止めどなくこぼれた。
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