第95話 もう一つの人知れない恋の話14


 賑やかな駅前を通り過ぎ、小夜からもらった住所を辿っていくと、静かな住宅街に入って行った。


どこにでもあるような若い世代がたくさん住んでいそうな住宅街だった。


そしてあるこじんまりした一軒屋に辿りついた。


表札には岩崎と書いてあった。


今日は日曜なので、きっと和夫はいるだろう。


一目だけ見たら帰ろう。澄子はそう思っていた。


窓は開けっ放しで、縁側に置いてある洗濯籠には洗濯物が山盛りになっていた。


誰かいそうな気配はあるが、誰もいないようだった。


洗濯物の山の中に和夫のシャツらしきものが見えた。


澄子は急に生々しい生活感を感じて、その場にいるのが苦しくなった。


やはり和夫の姿を見ずに帰ろう。


そう思って立ち去ろうとした時、後ろから声をかけられた。

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