第93話 もう一つの人知れない恋の話12


 小夜は澄子と誠一を自分の家に連れて行った。


そして夜更けまで澄子の話を聞いてやった。


洗いざらい小夜に話してしまうと、澄子の心は落ち着きを取り戻してきた。


澄子はしばらくの間放心状態になって、それからポツリと言った。


「和夫さんに会いたい…。」


小夜は困った顔で澄子を見つめた。


「小夜ちゃん、私…和夫さんに会いたいわ。」


澄子はポロポロと涙を流して言った。


「澄ちゃん、和夫さんはもう結婚してるのよ。以前話したでしょ?」


小夜は澄子を諭した。


「わかっているわ。一目、一目見るだけでいいの。和夫さん、今どこに住んでいるのか教えて!」

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