第92話 もう一つの人知れない恋の話11


澄子は正一と乳母を大声で罵倒した。


乳母の髪を掴んで引きずり倒した。


長箒を取ってきて、正一の制止を振り切り女を箒で家から叩きだした。


女が家を出ると、正一を罵倒しながら箒で打ち回した。


正一は普段大人しい澄子がこんなに激しく怒り狂って暴力を奮ったのに驚いて凍りつき、言葉を失った。


澄子自身も、自分がこんなに激しくなれるとは思わなかった。


澄子は箒を投げ捨てて誠一を抱きかかえ、フラフラと外へ出て行った。


大黒堂はもう無い。


頼れる親はどこにいるかもわからない。


澄子は泣きながら誠一を抱きしめた。


「澄ちゃん…?」


ふと声をかけられ振り返ると、小夜がいた。


「澄ちゃん…どうしたの?…何か…あったの?」


「小夜ちゃん…。」


澄子は泣きながら小夜に抱きついた。



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