第91話 もう一つの人知れない恋の話10



 正一の冷たい仕打ちと実家の崩壊というダブルの惨事で、澄子は母乳が出なくなってしまった。


困り果てていた時、正一が乳母を連れてきた。


乳母は一見愛想よい感じがしたが、ふとした瞬間とても冷たい目をしていることがあって、澄子は子供に乳を飲ませてあげることが出来てありがたいとは思いつつも、この乳母の事は好きになれなかった。


しかしおかげで誠一はすくすく成長して、離乳食も食べるようになった。


乳母の御役目御免となった頃、ある事実が発覚した。


澄子と赤ん坊が病院に行くと病院が急に休診日になっていたので、そのまま家に帰ってくると、乳母と正一が抱き合っていた。


正一に問い詰めると、彼は開き直ってこう言った。


「俺が本当に愛しているのはこの女性だ。この人との間に子供もいる。誠一より先に産まれた。誠一がまだ小さいからおまえと別れないでいるが、先ではおまえとは別れてこの人と一緒になるつもりだ。心の準備をしとくように。」


澄子は頭が真っ白になった。

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