第85話 もう一つの人知れない恋の話4


ある日、澄子は正一から呼び出された。


彼の母親が会いたいと言っているから家に来るように言われたのだ。


正一の家に行ってみると彼の母親はおろか、正一の他誰一人もいなかった。


「君の事は調べさせてもらったよ。僕の目を騙せるとでも思ったのか?」


正一は冷たい目で澄子を睨んだ。


「…正一さん、私…あなたと結婚できません。あなたを騙そうと思ってもいません。私は本気であの方を愛しているのです。」


澄子は決死の覚悟で言った。


目にはうっすら涙を浮かべ、握り締めた手は震えていた。


「何を血迷った事を言っているんだ。あんな貧乏学生が君らを養っていける訳が無いだろう!俺がどれだけおまえの家族を助けているかわかっているのか!」


正一は怒鳴りあげた。


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