第84話 もう一つの人知れない恋の話3


「和夫さんてね、真面目そうに見えるでしょ?でもよくとんでもなく面白いことを言って、私大笑いしてしまうのよ。」


澄子はよく小夜に和夫の事を話していた。


小夜は話した事の無い和夫に、澄子を通して親近感を感じていた。


 澄子と和夫は、よく周りの目を盗んで逢引をした。


和夫の下宿先のある街のジャズ喫茶に連れて行ってもらった事を、澄子は興奮まじりに小夜に話した。


澄子の話を聞きながら、小夜もいつかそのジャズ喫茶に行ってみたいと思った。


できたら和夫のようなステキな男性と一緒に行ってみたいと夢見るようになった。


二人の恋は日を追うごとに深くなっていき、もうお互いの存在無しでは生きていけないとまで思うようになっていた。


そんな澄子たちの行動を親に不審がられて危なっかしい時もあったが、小夜がうまく動いて二人の関係を隠し通したことも多々あった。


しかし、澄子の許婚の正一の目だけはごまかすことが出来なかった。





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