第82話 もう一つの人知れない恋の話1


「もう一つの人知れない恋の話」


主な登場人物 岩崎和夫(俺のじーちゃん)

       若松澄子(じーちゃんの初恋の相手)

    藤川小夜(えびす屋のおばあちゃん)

       正一  (澄子の許婚・のち夫)

       岩崎良子(俺のばーちゃん)




「小夜ちゃんは恋をしたことがあって?」


「あるわけないわ。私はせいぜい物語を読んで恋に恋する乙女どまりよ。」


澄子は実家の大黒屋でアルバイトをしている大学生と恋に落ちたという事を親友である小夜にだけ打ち明けた。


許婚のある身で他の男と恋仲になるなど、親や周りの人間にバレたらとんでもない事になってしまう。


しかしこの初めての恋心を誰かに打ち明けたかった。


親友の小夜だけは自分の事をわかってくれると信じて思い切って打ち明けた。


小夜は驚いた。


大人しくて優しくて、いつも自分の事より周りを優先させて我慢ばかりするような澄子がこんな大胆なことをするとは夢にも思ってなかったからだ。


だけどそんな澄子が敢えてこのような大胆な行動に出るには、よっぽどの覚悟があったからに違いない、自分を信じてきた人たちを裏切ってまで気持ちを貫きたい相手なのだろう、だったらみんなが敵にまわっても親友である私だけは澄ちゃんの味方になってあげよう。


小夜はそう思った。

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