第81話
俺はおばあちゃんに頼んだ。
「あそこはねぇ、昔はすごく羽振りがよかったんだけどね、手を広げすぎたのと洋菓子が流行ってきたのとで経営が立ち行かなくなったみたいでね、大借金抱えたんだよ。娘の澄ちゃんが金持ちの材木屋に嫁入りすることで、そこから資金をたくさん出してもらって一時は持ち直したんだけどね、やっぱり一度贅沢を味わうと、人は暮らしを変えられないんだろうね。息子さんの代で結局潰れてしまったんだよ…。」
「大黒屋さんの人たちはそれからどこに行ったんですか?」
「どこだろうね? 夜逃げみたいに突然いなくなったから、今どこにいるのかわからないね。」
「澄子さんの事、何か分かりませんか?」
「澄ちゃん? 澄ちゃんと私は幼馴染で一緒に学校に通ってたんだよ。家も近かったからよく一緒に遊んでたよ。」
「そうなんですか! 実は僕、祖父に頼まれて澄子さんの消息を調べてるんです。澄子さんの事、教えていただけませんか?」
「あなたの…おじいさん…? もしかして…和夫さん?」
「そうです!僕の祖父は岩崎和夫です! 祖父の事、ご存知なんですか?」
「…直接面識は無いんだけど、澄ちゃんからいろいろ聞いてたから…。和夫さんはお元気?」
「はい、最近は少し体が弱って施設に入ってますが元気です。祖父が澄子さんに会いたがっているんです。」
「…そう…。和夫さんが澄ちゃんに会いたがっているのね…。」
えびす屋のおばあさんは、少し涙ぐんでいた。
「私の知ってる事をお話しますね。」
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