第70話
「ばーちゃん、おもしれーな!でも俺も弁当開けてししゃもが整列してたら涙出るかも。」
類は笑い転げながら言った。
「でもさ、おじいちゃん、あんなに辛い別れがあったのに、よく次の恋愛に進めたね。」
旭が言った。
「ばーちゃん、じーちゃんが大学の頃に住んでいたアパートの大家さんの娘さんだったらしいんだ。じーちゃん、今あんな感じだけど、若い頃はけっこうカッコよかったみたいで、ばーちゃんはじーちゃんがアパートを借りる挨拶をしにきた時に会って、一目惚れしたらしいんだよ。じーちゃんは鈍い男だから、そんなばーちゃんの気持ちに全く気付かず、よく挨拶してくれる愛嬌のある子だな~と、ノンキに思ってたらしい。ばーちゃん、しょっちゅう待ち伏せしてたらしいんだけど全然気付かなくて、偶然によく会うな~くらいに思ってたんだって。ばーちゃんの方からプロポーズしてきて、気が付いたら結婚してたって、じーちゃん言ってた。澄子さんが結婚して、じーちゃんに対して罪悪感を抱かなくてすむように幸せになるって決めて、じーちゃんそれをちゃんと実行したんだと思う。ばーちゃんにも家族のみんなにも優しかったし、ちゃんと幸せになれてたんだと思うよ。」
確かにじーちゃんから澄子さんの話を聞くまで、まさかそんな辛い過去があったなんて信じられないくらい、いつも穏やかで面白くて家族思いのじーちゃんだった。でももしかしたら、そんな辛い過去を忘れるために必要以上にそう心がけてたのかもな。なんだかそうも思えてきた。
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