第67話



そんな俺を見る父と母はいつも首をかしげる。


このカップが俺にとってそんなに大事なものだと知らなかった母は、一度捨てようとしたことがあった。


それを見つけた俺は本気で怒った。


こんな間抜けなキャラクターのカップ如きで恥ずかしいがキレかけた。


普段どちらかというと穏やかというか、ボーっとしている俺が怒り狂ったので、母はとても驚いていた。


そのカップを気に入っていたのもあるけど、たまたま反抗期と重なっていたのかもしれない。


俺はあまり反抗期らしい反抗はしなかったけど、そのカップの事件で内に秘めたる反抗心が爆発してしまったのかもしれない。


母からは、「もしかしてそのカップ、好きな子からのプレゼント?」などと聞かれたが、全く身に覚えが無い。


俺はキャラクターグッズなど全く興味が無いので、もしかしたら母の言うように女の子からのプレゼントかもしれないが、カップが捨てられたくらいで怒り狂うほど好きだった女の子などいない。


多分、その頃の習い事のクリスマス会か誕生会なんかでもらったものだろうと思う。


しかしそんなことはどうでもいい。


俺はこのカップを愛している。


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