第66話


その時玄関のチャイムが鳴った。


「おっ!コーヒーか!ちょうどそんな気分だったぜ。」


類は一目散にキッチンに向かって行った。


「この芳醇な香りを独り占めしようとはけしからん!」


旭は鼻をクンクンさせながら俺をギロリと睨んで言った。


二人にもコーヒーを淹れる破目になったので、カップボードからコーヒーカップとソーサーを二セット選んだ。


類にはロイヤルコペンハーゲンの少し東洋趣味の入った物で、旭には豪華な薔薇の絵が施されているウェッジウッドの物を選んだ。


どちらも母のコレクションのアンティークだ。


そして俺はというと、いつどこでもらったんだか買ったんだかわからない犬のようなウサギのような耳とほっぺたが垂れ下がっているノンキなキャラクターの安っぽいコーヒーカップだ。


コーヒーは本格的に淹れるくせに何故そんなふざけたカップで飲むんだ? とよく言われるのだが、何故かどうしてか、このカップで飲むのが一番美味しく感じてしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る