第51話


 駅の裏手に昔の水飲み場らしきものがあった。


この場所から戦地に赴く人々や戦後引き上げてきた人たちの喉を潤したという。


どんな気持ちでこの水を飲んだのか。


俺の両親もすでに戦争が過去の歴史の一つになって生まれてきた世代で、俺自身、この国が外国と戦ってきたなんて想像がつかない。


だけど何故か俺は昔から戦争時代の本を読んだり、テレビで戦争のドキュメンタリーをやっていたら必ず見る。


そういう物に触れるのは、正直ものすごく怖くて本当は目をそらしたくてたまらないのだが、何故か見てしまう。


そしてその後トラウマでしばらく鬱っぽくなる。


戦争で人が傷ついたり死んだりするのは本当に嫌だし、何より自分の思っていることを正直に言えない世の中が本当に嫌だ。


上官から意味も無く殴られたりとか、連帯責任とか、考えただけで怒りが湧いてくる。


現代にそういう考え方はあまり残っていないかもしれないけど、なんとなくそれを彷彿とさせてしまう体育系の部活の雰囲気が苦手で、運動は好きだし得意な種類のスポーツもあるけど、勧誘されてもずっと断ってきた。


尊敬できる先輩は全く問題ないけど、尊敬できないヤツが学年が上というだけで偉そうにしたり下の者をイビったりするのは我慢が出来ない。


俺は絶対手が出てしまうとわかっているので、最初から関わらないようにするのが正解だと思っている。

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