第50話


 翌朝、じーちゃんと石田さんに見送られて施設を出た。


じーちゃんには、昔大黒堂があった所に行ってみると伝えた。


じーちゃんは、ありがとな、と言って喜んでいた。


 電車に乗る前に一箇所だけ宝探しをしようと思った。


座標がちょうど駅を示していたからだ。


その駅は歴史ある駅で、老朽化が進んでいた為、何年か前から保存修理工事をしていた。


最近になって工事が完了し、その駅舎が建った大正時代の姿に再現された。


駅の中は西洋と東洋がミックスされたようなノスタルジー溢れる雰囲気で、入るとタイムトリップしたような気分になった。


俺は大正時代の建造物が好きだ。


大正時代の建物の、優雅でロマンチックで、でもどこか哀愁が漂っているような雰囲気に惹かれる。


大正って、時代的にも戦争に突き進んで行く、決して明るい時代じゃなかったような気がするし、若者たちは未来に希望なんて持てなかったような気がする。


少なくとも自分がその時代に生まれていたら絶望感しかなかったと思う。


そんな時代の建物が、今の建築よりもロマンチックで美しいというのが、なんだかすごく胸を締め付けられる。


その美しさが当時の人たちの心の叫びのような気がしてならない。



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