第49話


「そうなんですか…。」


信じられない話だけど、でもよく亡くなった人が夢枕に立つっていう話あるから、そういうことも有り得るのかもしれない。その時俺はハっと思った。


「もしかして…石田さんは澄子さんの霊を見たんじゃないですか?」


石田さんは俺をじっと見た。そして言った。


「見た。」


「と、いう事は…澄子さんはもうこの世にいないって事なんじゃないですか?」


「…そうとも限らない。俺が見たのは一瞬で、乃海君のおじいさんの部屋のドアの前に立っている女性の姿を見たんだ。次の瞬間もういなくて。霊が見えたからと言って、亡くなってなくてもその人の想いが強ければ生きていても魂がふと抜け出して飛んで行くこともあるんだよ。」


「生霊ってやつですか?」


「その響きはちょっと怖いけど、そういう事だろうね。その女性の姿が見えたのは一瞬だからどっちかわからなかったんだ。俺も人よりちょっと霊感があるってだけで、プロの霊能者って訳じゃないからね。」


石田さんはビールをグイっと飲んで、しばらく腕組して考え込んでから俺にこう言った。


「多分、澄子さんは…来世の約束の事を知っていて、君のおじいさんとその約束を交わしたいのかもしれないね。いずれにしろ、何となく俺の感では、澄子さんを探し出すのは速い方がいいかもしれない。根拠は無いんだけど、なんだかそんな気がするんだ…。」


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