第43話 人知れない恋の話10
暴風雨の中、和夫の元に走ったその日、澄子は勇気を振り絞って父親に自分の気持ちを正直に話した。
当然父親は怒り狂い、澄子の頬を思いっきり張り飛ばした。
澄子はそのまま外へ飛び出し、気付いたら和夫の元へ来てしまっていた。
和夫はしばらく状況が理解できず、毎日のように澄子の家に行って話を聞こうとした。
しかし毎回門前払いで、澄子もすでに実家にはいないようだった。
どこに嫁いだのかも教えてもらえずじまいだった。
和夫はしばらく抜け殻のようになり、学校にもアルバイトにも行かず、家に引きこもり酒に溺れる毎日だった。
一人でいると、澄子と過ごした日々を思い出し涙が止まらなかった。
あの日、土砂降りの雨の中やってきた澄子を自分は受け止めるべきだったのか?二人で駆け落ちするべきだったのか?
和夫の後悔は止まることがなかった。
しかしこれは澄子の選んだ道だ。
この現実を自分は受け止めるべきなんだと思った。
澄子に何か事情があったのかもしれないし、自分がこのまま不幸な人生を歩んでしまったら、裏切ってしまった澄子が罪悪感を抱いてしまうかもしれない。
澄子にそんな可哀相な事はさせたくない。
澄子の幸せを遠くから祈っていよう。
そして澄子が罪悪感を抱かなくていいよう自分も幸せになろう。
和夫はその時、そう思うことで自分を慰めた。
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