第42話 人知れない恋の話9
ずっと後で知ったことだが、澄子の縁談は和夫と澄子が出会う前から親同士の間で既に決まっていたそうだ。
一見商売繁盛しているように思えた大黒堂だったが、その実情は火の車だった。
商売を手広くやりすぎたせいだった。
澄子の婚姻は、危機に瀕した大黒堂を建て直す為の政略結婚だった。
相手は他県の大きな材木問屋の息子で、息子といっても澄子より15も上だった。
親同士が知り合いで、大黒堂に訪れたときに澄子を見かけて一目で気に入り、嫁に欲しい、嫁に来てくれるならいくらでも経済的援助をするという約束を交わしたそうだ。
澄子はずっと、家の為、そして家を継ぐ兄の為に、自分は喜んで嫁ごうと思っていた。
だが和夫と出会って、その気持ちは揺るいでしまった。
和夫と一緒にいると、今まで見てきた世界がまるで違うもののように見えた。
幼い頃から父と母を見ていて、将来の自分はこんなもの、結婚生活は修行のようなものと思っていたが、和夫といると、違う未来もあるのではないか、と思うようになってしまった。
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