第38話 人知れない恋の話5
夏休みが終わり和夫が下宿先に戻ってからは、和夫は心にぽっかり穴が空いたように澄子の不在感を感じていた。
お互いの予定が合い、やっと会えたのは一ヵ月後の事だった。
いつものジャズ喫茶に行き、その後は二人で公園の中を歩いた。
お互い話すことがたくさんあったはずだったが、帰りの時間が近づくにつれて何も話せなくなった。
澄子を駅のホームまで送って、電車の窓越しに見つめあった時、和夫はある決心をした。
学業をがんばって一流の会社に就職が決まったら、卒業と同時に澄子に結婚の申し込みをしよう。
その後、和夫は二人の未来の為に今まで以上に猛勉強した。
翌年の夏には、ある一流企業の技術職に就職が決まった。
これでやっと澄子に結婚の申し込みが出来る。
あとはお互い卒業を待つのみだ、と思っていた。
そんな矢先、台風が近づく大雨の晩、澄子はびしょ濡れで和夫の下宿先にやってきた。
「和夫さん、今すぐ私をもらって下さい。」
澄子は震えながら涙目で和夫に訴えた。
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