第37話 人知れない恋の話4


そして和夫は再びラジオのネジを閉めた。


パチッ


和夫がスイッチを入れるとラジオからジャズが流れてきた。


「よしっ!」


和夫は歓喜して拳を上げた。


澄子は緊張の糸が解れたせいでその場に倒れそうになった。


和夫は澄子を抱き起こした。


二人は思いもかけず抱き合ってしまい、その瞬間恋に落ちた。


 和夫はラジオの修理に追われて、皆が帰ってくるまでにしておくように言われていた仕事が全然終わっていなかった。


そのせいで澄子の父である社長からさんざん怒られた。


和夫は一切言い訳をせず、ひたすら謝っていた。


奥から澄子が何か言いたげにやってきたが、何もするなと目配せをして。


澄子は目に涙を溜めて和夫に頭を下げた。

 


 それからというもの、二人は人目を盗んで会うようになった。


もともと同じことに興味があったので、趣味の話に花が咲いた。


お互いこんなに何もかも合う人がいるなんて信じられないと思っていた。


和夫のバイトが休みの日には、二人で和夫がよく行くジャズ喫茶に行った。


澄子は今まで男と一緒にこのような場所に来たことなど無かったので、入る前に怖気づいてしまったが、一度入ってしまうとその魅力に取り付かれて、和夫にまた連れて行ってもらうようにお願いするようになった。


和夫は澄子を喜ばせたくて、今まで以上にバイトを増やすようになった。

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