第25話

快速電車はひたすら目的地に向かって走る。


「そうだよ、君。ただひたすらに目的に向かって突っ走るのです。速く走ると景色がどんどん流れて行って、やがて溶けて見えなくなる。前方で待っている目的地だけがフォーカスされるのです。余計なことを考えずに済むではありませんか!」


そう囁きかける快速電車に俺は問いかける。


「でも、ゆっくり走れば、車窓から将来出会うべき大事な人々や住むだろう場所なんかが見えたりするんじゃないの?」


「そういう事もあるかもしれませんね…。でも、でもですよ、それがもし見えたとして何なのです?将来会うべき人や、住むべき場所は、その時に会ったり住んだりすればいいだけの話ではないですか?」


快速電車は反論した。

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