第8話


「盛り上がってるな。何の話してるんだ?」


父親が聞いた。


「内緒。」


俺はじーちゃんに目配せをして言った。


「まだここにいるよね?俺ちょっと近所を散歩してきていい?」


「土地勘無いのに大丈夫?帰って来られる?」


「わからなくなったら地図のアプリを見るよ。」


心配そうな母親にそう言って部屋を出た。


施設の入り口を出ると横に駐輪場があって、ここの施設の名前が入った自転車が何台か置いてあった。


「自転車、使っていいよ。」


後ろから話しかけられ、振り向くとここの若い男の職員さんが立っていた。


「いいんですか?」


「うん、ほとんど誰も使ってないし。何か聞かれたら石田から許可もらったって言ったらいいよ。あ、俺が石田ね。」


石田という職員さんは笑顔で言った。


「ありがとうございます。じゃ、ちょっと借ります。」


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