第2話
「
母が言った。
海沿いの小高い丘の上に白いホテルのような建物が見えた。
介護施設というより結婚式場のような感じだ。
俺の名前は岩崎乃海。
乃海と書いてノアと読む。
もちろんあの聖書に出てくるノアから付けられた名前だ。
母親がクリスチャンだったので、そういう名前にしたかったのだそうだ。
小さい頃はこの名前のせいで女の子に間違われる事が多かったので、自分の名前があまり好きじゃなかった。
大きくなるにつれて、感じも響きも意外といいし人とあまり被らないから、けっこう好きになってきた。
車は施設のある小高い丘の上に着いた。
目の前の視界がパっと広がった。
空が高い!
そして海はどこまでも青く深く広がっていた。
別世界とはこういうとこを言うのかと思った。
じーちゃんと、ここに入居している老人達には悪いが、ここはとても天国に近い場所だ…などという罰当たりな事を考えてしまっている自分がいた。
しかし、もしこの広大な美しい海の景色の中に、突然神や仏が出てきたとして、誰が驚くだろうか? いや、むしろ当たり前の事なんじゃないか? とすらこの場所に於いては、そう思えてくる。
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