約束

まんまるムーン

第1話


 じーちゃんがどうしてもと入居した介護施設は、隣県の海沿いの町にあるという。


父の運転する車の助手席に母が座り、後部座席にじーちゃんと俺が座った。


高速道路を降りてしばらく走ると、海沿いの道に出た。


窓を少し開けてみると、海風が心地良く耳をかすった。


横に座っているじーちゃんを見ると、じーちゃんは目をつぶって寝ているように見えた。


その顔は穏やかで、嬉しそうにも見えた。


俺はどうしてもじーちゃんの気持ちが理解できなかった。


じーちゃんは高齢だがまだ元気で、身の回りのことは自分で出来るし、母はじーちゃんにとって義理の娘だから多少の遠慮もあるかもしれないけど、仲は良さそうに感じていた。


実際、母からもじーちゃんからもお互いの愚痴など聞いたことが無い。


父は仕事で忙しく、あまりじーちゃんとの時間を持つことが出来ないが、実の息子だし仲も良かった。


家族は上手く行っていると孫の俺から見てもそう思っていたのに、じーちゃんは突然、その介護施設に入ると言い出した。


どうやって探し出したのか、家からも遠い縁もゆかりも無い場所にあるその施設に、もうずっと昔から入ることを決めていたかのようにじーちゃんの意志は固かった。



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