第33話 レファの停滞
レファは悩んだ。いや、正確には怯えているような状態に近かった。
彼はこの国での殆どを客室内で過ごした。
王とレモゥは、そんな彼に触れることはなかった。
数日が過ぎた。
スパーシャは部屋の中でじっとしていられないと言い、町で子供たちと遊んだり、薪割りを手伝ったりとした。
コズは毎日レファと話した。レファは食事もするし、受け答えもする。決して身体は壊してはいないが、いつも暖炉を見つめていた。彼がいつも身に着けていたペンダントは、今は机の上に無造作に置かれていた。
「ごめん、コズ」
「いいよ。気にしないで」
部屋に食事を運んできたコズに、レファはそっとすまなさそうに礼を言った。
「スパーシャは国の中を歩いて回ってるよ。わたしも、ちょっとお出かけしてみたりして」
レファは食事をとりながらコズの話を聞いた。食事は、これまでのどの国よりも質素な薄いスープと固いパンだった。
「この国……この時代ね、過酷なように見えて、だからか結構人は皆優しいの。過去に一回人間同士の戦いを治めてるからかわからないけど、外は寒いけど人の心は温かいっていうかさ?」
コズは、レファの気が紛れればという思いを含めて話をする。自らが歩いてみてきた話、スパーシャと会話を交わして聞いた話。
レファは相槌を打ち、興味ありげに話を聞くも、その心の奥底ではコズの話に耳を傾けていないように彼女は感じていた。
「……レファ、焦らなくていいよ。待ってる」
「ごめん」
コズは微笑んでから顔を横に振った。食べ終わったレファの食器をお盆に乗せ、部屋を出ていく。
ぱたりと閉まった木の扉を
このままでは駄目だとする自分と、何が駄目だと問う自分。ここまでの道のりが定められた道のりならば、この先の定められていない道がどうなるかという急な不安。自らの
自分は何のために旅をしてきたのか。それは外の世界を見るため、そして、王に課せられた
だが、この国の王から伝えられた滅亡という言葉は十七の彼にとっては一度に与えるショックが大きすぎた。
自分次第で、世界の行く末が決まる。
それは、レファにとって何よりも重い足かせとなって、彼が立つことを邪魔した。
数週間が過ぎた。
レモゥはただ待った。この冬の国で、かつて自分が思い悩んで国を親族に託したのと同様に、レファが思い悩み、結論を出すことをただ待った。
スパーシャは子供たちの人気者になり、町では貴重な労働力として重宝されていた。彼は進む決意をしたが、レファが立ち直るのをただ静かに待ち続けた。一度止まってしまったところから前に進むには何かきっかけが重要だということを、彼は重々承知していたが、そのきっかけを作り出せるのは自分ではないと考えていた。
コズは毎日レファと話した。レファは毎日を迷いの中で過ごした。コズはそんな彼を、ゆっくりと見守った。食事を共に食べ、暖炉の前で話をする。旅を始めたときより少し伸びてきていた髪の毛を整えてやる。
それから更に暫くして、路面の雪が融け、世界は温かな陽光に照らされた。
冬の終わりが来た。
レファはまだ、部屋の中にいた。
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