第25話 残骸

 スパーシャは陽気な空の下を歩いた。

 元々、走り回っている事が好きだった彼は、この国に来てから外を出歩くことを誰よりも楽しんだ。

 大通りを歩き、時には走った。飛んでいる人間が多いおかげで、建物の上に登っても奇異の目で見られない事も彼には幸運にはたらいた。

 適当な建物の上で日向ぼっこをしたり、路地裏の動物と追いかけっこをして遊んだりした。

 そうして街を探索する中で、スパーシャはこの国の文化に触れる。彼が人間だと思って話しかけたものが人間ではないことが多々あった。

 それは、遠目からすると人間と大差はなかったが、近付けばその表情や体のつくりで人間ではないとようやくわかるほど精巧な人形達だった。人形たちは魔力を以て命令を与えられ、それぞれの仕事に従事しているようだ。

 スパーシャは、キカイのようだな。と率直に感じた。だがそれは、キカイよりも精巧で、より細かい作業に対応しているように見えた。


 スパーシャは路地裏を歩く。天気の良い大通りを歩くのは気持ちがよかったが、生来せいらい薄暗い所で暮らしてきていた為、落ち着くのは日陰の側だった。

 そうして歩いているうちに、家と家との間、ぽっかりと空いた空間に出る。そこは、少しの日向と大部分の日陰で出来た、路地裏の広場だった。そこかしこで猫が寝転がって気持ちよさそうに寝息を立てていたが、スパーシャの目を奪ったのはその息をする動物達ではなかった。



「おいおい、おいおいおい」



 スパーシャは駆け寄った。広場の一角、ゴミの山のように積もるソレに。



「これ、キカイじゃねーか……?」



 スパーシャは、積もった錆だらけの鉄くずを拾い上げて、言葉をこぼした。

 

 

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