第14話 くすんだ青空
「場所を移そうか」
個人的な話になる――とサイエは言って、三人は上層の部屋へと舞い戻った。
サイエはいつもよりもややゆっくりとした速度で語りはじめる。
スパーシャはサイエと同じ
「ボクがそもそも、キカイに
サイエは
「スパーシャは、昔言ってたよ。言ってたさ。いつか大人になって体が大きくなったら、この錆臭い国を飛び出して、煙でくすんだ青空じゃなくって、とびきりの
サイエはまるで自らの身に起こった事故のように、右手をおさえながら語り続ける。
「ボクはすぐに取り掛かったんだ。ああ、そう、そうだ。スパーシャにキカイの身体を与えたのボクだ。手術――なのかどうかわからないけど、それは上手く行った。見た目には。うん。事実としてスパーシャは生きていて、ああやって走る事もできる。手がけたのがボクだからね。下層にいる案内のキカイなんて目じゃない。そして、そして、ボクはスパーシャが目を覚ました時に、本当に、本当に嬉しかった。でも、でもスパーシャは違ったんだ。体の大半がキカイになって、もう一生大きくなることの叶わない体になって、絶望した。絶望したんだよ」
サイエは頭を抱えて
「スパーシャは、人間でもキカイでも中途半端な存在になったと言って、その身体を呪った。
サイエは頭を振った。
「でも、まだ彼は
サイエは表情に
「でも、ボクは諦めてない。うん、うん。スパーシャは、生きている。だから、呼びかけ続ければ立ち直ってくれるはずだ、とね」
サイエはキカイについて語る時のように確固たる思いをもってその言葉を口にする。
レファは思わず閉口していた。彼らの背負っている物はレファとは方向も種類も異なるが、とても重い物であると感じ入った。それはコズも同様のようで、普段は明るさが取り柄の彼女も語るに適切な言葉が見当たらないという風に、唇を噛み締めて押し黙っていた。
「いやなに、暗い話をしてすまなかった。うん、こちらの事情だ。気にしないで欲しい。それよりも、中層はどうだった? 楽しかったかい? 楽しかっただろう」
そして、サイエはパッと空気を切り替えるように明るい声色で話題を切り替えた。レファはかける言葉の見当たらなかった自らを内心で
「ああ、僕の国では見たことのないような物が沢山あった」
「そうかい、そうかい。まぁ、なにせ、常日頃から新しいモノを生み出し続けてるからね。それはそうだろう、うん、そうだろう」
「かき氷っての、冷たいし甘いしで美味しかったなぁぁ」
「おお、あれを食べたのか。うん、うん。実にいい着眼点だ。あれはボクも大好物だ。特に氷を削っている時のキカイの音がたまらない」
「うーん、わたしはそっちの方面はちょっとわかんないなぁ」
「はっはっ、ボクにしかわからない
サイエはいつものように高笑いをし、乗り物のキカイがガシャンガシャンと無機質な金属音を響かせた。
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