第8話 手合わせ
レファは心の中でため息をついた。そして木の棒の
お互いに簡易的な防具を身に
事の発端は暫く前の時刻に
それでも、進まなければならない。レファは王からの命である「最果てにある国」へ向かわなければならない。期限は明言されてはいなかったが、それは決してゆっくりとしていてはいい旅ではないはずだとレファは考えていた。
そうして、この国を発つ準備をしている折、それを察したコズが「わたしも行く!」と言ってきたのだ。
「そうはいっても、僕の旅だし。コズにはこの国があるだろ」
「でも、村長はレファを助けるように言われたんだよね? それなら、わたしがついていってレファを助けるのも、そのうちに入らない?」
コズの
そうしてどう断ればコズが納得するものかと、言葉を渋っていると
「だいじょーぶ。わたしだって、戦いの心得くらいあるんだよ」
そうして、村の広場に至る。曰く、コズは昔から村の自警団の稽古に参加して独自の槍術を身に着けているそうだが、レファは未だ半信半疑であった。
「それじゃあ、よろしくね」
「あ……うん」
それが開戦の合図となったと気付くのにレファは一瞬遅れてしまった。コズは槍を引いて片足を上げると、次の瞬間にはレファの直前まで突進を仕掛けてきていた。長い木の棒が、すんでのところで横に避けたレファのわき腹を
「油断はきんもつだよ」
「……わかった」
レファは大きく息を吸って
コズは、今度は踏み込まずに槍を幾度も突き出す。牽制のようにも見て取れるその無数の
フェイクの一撃を木の剣で弾き、一度レファは距離を取る。コズはレファの予想以上に対人戦闘に慣れていた。剣と槍との有効射程の違い、レファの気の緩み、息遣い。それらを的確に突いてこようとする。
レファは一度調子を取り戻そうと間合いを取ったつもりだったが、そうはコズが許さない。開幕と同様、コズは大きく踏み込んで今度はレファの胴を大きく
「ふふ」
コズが楽しそうに笑う。コズはある程度の予測、そして自らのセオリーの中で戦いを行ってレファを
「おおぉぉっ!」
レファはできる限りの雄たけびを上げ、コズの足元を目掛けて木の剣を投げつけた。突如として上げられた雄たけびにコズは思考を奪われ、その場で慌ただしいステップを踏むように木の剣を避ける。
その刹那をレファは誘っていた。最小限の動作で踏み込み、木の槍を先端側から奪い取る。注意の削がれていたコズの手には大した力はこもっておらず、レファは至極容易にその武器を奪い取った。
「うっわわわわっ」
コズの慌てる声が聞こえる。レファはここぞとばかりに奪った武器で畳みかけようとするが、槍を扱ったことがないばかりに踏み込み過ぎたことが
「なっ」
「ごめーんね」
低く体勢を落としたコズは足払いをレファに仕掛け、レファはいとも簡単にそれに引っかかってしまう。支えを失って大きく体のバランスが崩れる。
コズは足元に落ちていた木の剣を拾い上げると、そのままの勢いでレファの隙だらけの胴の左を目掛けて振りぬいた。
レファは倒れこむ直前、なんとか右足で堪えて瞬時に槍を短く持ち直し、コズの胴の左を目掛けて振りぬいた。
「うっ」
「ったぁ」
はたして、両者の獲物はそれぞれの左のわき腹を捉えていた。
「えーっと、引き分け、でいい?」
「うー、くやしいぃ!」
息を切らして聞いたレファの言葉に、コズはその場で仰向けに転がって悔しさを
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