第四十四話:幼馴染ストライド
「売店のご飯もおいしいねー、
「それは良かったよ」
仕方がないので
本人が
小佐田がニコニコと小さな口に揚げパンを頬張る姿を見ていると、
「あっ、
とその小動物がつぶやいた。
「ん?」
小佐田の視線をたどると、売店のはす向かいにあるラウンジでは小柄で黒髪の女子と、同じく黒髪の男子が、真剣な顔で議論を交わしているようだった。
「あの、女性の2年生の先輩がミス研の部長の天野先輩。相手の人は、多分副部長の
首をかしげながら小佐田がひょこひょこと近づいていく。喧嘩してるなら行っちゃダメだろ……と
「やっぱりこの謎はこじつけが
「そんなことありません! これは佐野くんが
「鈍感かどうかは関係ないだろ? 実際、僕は解けたわけだし。小学生も来るって言うのに、あまり知識を求められるような謎を入れるのもどうかなって話をしてるだけ。だいたい、天野さんの謎はいつもちょっと遠回りなんだよ。あの傘の謎だって僕だから
「今、傘の話をしますか!? 受けて立ちますよ!?」
見かけ上は言い合いのようだが、どこか議論を楽しんでいる感じがする会話だった。
「天野先輩、こんにちは!」
と小佐田が挨拶すると、
「ああ、ちょうどいいところに素晴らしい
と、天野さんがぱあっと顔を輝かせる。
「佐野くん、ご紹介します! 彼女は写真部部長の小佐田さんです! ええっと小佐田さん、そちらの方は?」
「こんにちは、写真部部長の小佐田です! こっちはわたしの幼馴染の」「友人の須賀です」「また
定番になりつつある(といっても2回目)やりとりで自己紹介をした。前回は
「どうも。ミステリー研究部、副部長の佐野です」
「須賀さんはじめまして! ミス研部長の天野です」
天野さんと佐野さんがこちらに頭を下げてくれる。
天野さんは2年生のはずなのに、同い年の佐野さんにも、おれたち一年生にも敬語で接してくれている。そういう人なんだろうか。
「それで、どうかされたんですか? 何かお役に立てそうなことがあれば、わたし、頑張りますよっ!」
小佐田が力こぶを作るようなジェスチャーとともに水を向けると、天野さんが「そうでした」と手を叩く。
「私たちミス研は
「「『校内歩き謎解きゲーム』?」」
「はい、校内に謎をいくつか掲示して、それをスタンプラリーの
「へえー! 面白そうだね、須賀くん!」
「そうだなあ」
謎解きの
「なのですが、私が作った謎を佐野くんが
「僕だって別に天野さんの努力を認めていないわけじゃないんだよ。ただ、作った謎が、どうも難解なんじゃないかって思っただけで。実際、謎解き慣れしているミス研の僕たちだけで話し合っていても、問題の難易度って分からなくてね……」
天野さんから恨めしそうに見られながら、佐野さんが苦笑いをした。
「なるほどです……!」
たしかに、その悩みはすごく真っ当に思える。
「ということで、ちょっとお2人にも解いてみて欲しいのです。もしご協力いただけたら、当日クリアしたらお渡しする予定の
なんか、既にRPGゲームのクエストじみた展開になってきている。正直ワクワクしないでもない。と思って右を見ると『やるよね!? やるよね!?』とこちらを輝く瞳で見上げてきている
「おれたちは全然構いません。ちなみに、粗品って何がもらえるんですか?」
「こちらです!」
天野さんの小さな手のひらの上、差し出されたのは、
『りいうえお』
と、書かれたシール。
「はあ……?」
なんだこのシール? とおれが首をひねると同時、
「なるほどっ! 『あがり』ってことですねっ!」
と推定IQ120以上の子犬が声を上げた。
「ああ……!」
小佐田の推理でピンときた。
『あいうえお』の『あ』が『り』になっているから、『りいうえお』は『あがり』を指す言葉ということか。
そのシール、要るか? と思わないではなかったが、こういった謎解きゲームは謎を解く過程自体が価値であり、粗品はあくまでもおまけだ。記念としては、
「ほら、佐野くん、見ましたか? このカンの良い小佐田さんがこの謎を解けなかったら、私は
「分かったよ。天野さんの言っていることは筋が通ってるし、そうしよう。変なことに付き合わせてごめんね、2人とも」
「とんでもないことですっ!」
ということで。
天野さんがスマホを操作し、そのメモ帳に書かれた謎を提示してくれる。
* * *
ここ、
なんと、あだ名を本名と別の名字でつけると言うのです!
「
「
それでは、「
* * *
その問題文を「へえー……」と楽しそうに眺めてから、たった数秒。
小佐田は、
「分かりましたっ!」
理知的な笑顔を輝かせた。
「ね、須賀くんも分かったでしょ?」
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