第三十九話:すけべな幼馴染
「おはよっ、
翌朝、しっかりと熱も下がり、すっきりした体調で学校に向かう。
「おはよう、オサダナツミ」
「なんでフルネーム!?」
小佐田が全身で驚きを表現する。
「はは、なんでもねえよ。
「珍しく笑ってくれてるのになんか嬉しくないのはなんでだろ……?」
小佐田が首をかしげているのを横目に歩き出す。小柄なローファーの足音が横に並んだ。
「っていうか、学園祭まで幼馴染研究はしないんじゃなかったっけ?」
「うんっ。でも、朝は須賀くんのよふかしにあんまり関係ないでしょ? どうせ登校はするんだし、その間一緒にいても迷惑かけないかなあと思って」
どちらかというと迷惑なのは時間を
「わたしも放課後は学園祭の準備しないと間に合わなそうなんだけど、朝は関係ないから。朝練とかする部活じゃないし」
「そうか」
そういえば
「でもまた早く幼馴染したいなー。昨日、須賀くんの部屋でもやりたいこと、色々あったんだよ?」
「だよ? って言われても」
「須賀くん
「そうだな……」
なんでここまで
「例えば、したかったことはね、」
おお、このパターンは……。
おれがそちらに注目すると、小佐田は「んんっ」と咳払いをして、声帯を整えた。なんだそのプロみたいな
「『にひひ、ベッドの下、見てもいい? どうせ、えっちな本とか隠してるでしょー?』女の子が言うんだよ。そうすると、マンガとか読みながら『おう、別にいいけど』って男の子が平然と答えるのね? 『いいんだ? なーんだ、ベッドの下はシロか、つまんないなー……』とか言いながら、『わたしもマンガ読もーっと』って本棚をあさるんだ。そうすると、『おい、お前、そこは……!』一転して、男の子が慌て始めるの。『おっ? ブツはここかな? 分かりやすすぎるぜっ』って舌なめずりして
病み上がりの小佐田劇場がなんか男性向けラブコメだな……。なんだその90年代の漫画みたいな世界観の幼馴染は……。
にやにやとしながら片手で本を開くような動作を見せてきている小佐田を見ながらおれは話の続きを予想する。
小佐田は話をひねってくることがあるからな。そこにはカバーを付け替えられたエロマンガがあるかと思いきや、何か違うものだった、とかそういうパターンだろうか?
「……
「おいおいおいおい」
せっかく人が予想しているのに『
「ほえ?」
「え、カバーがぶかぶかなマンガは?」
「あ、続き聞きたかった?」
何を本当にキョトンとした顔してんだこいつ。
「物語を途中で切り上げられたら誰だって気になるだろ」
「やっぱり聞きたいんじゃんっ! もー仕方ないなー」
「そのお姉さんみたいな喋り方をやめろ」
そしてそのお姉さんみたいなキャラもなんか古い。
「その少年マンガのカバーがかかった本を開くと、なんとそこにはえっちなマンガがあるんだよ!」
キラキラとした瞳で見られて、「へえ……」と少し拍子抜けした声が出る。思ったよりも意外性がなかった。
おれは、2人で撮った写真だけが集まったアルバムが漫画のカバーに挟まれて隠されていたのかな、くらいまで想像していたのだが。……ん? なんでおれがそこまで想像をしなきゃいけないんだ……?
「でね、『やっぱり持ってるんじゃん、こーゆーの!』とかいいながら、女の子がパラパラめくってたら、なんか女の子もなんか変な感じになってきちゃって……」
「変な感じってなんだよ……」
「で、女の子が言うんだ。『ねえ、あんたさ、こういうの、興味、あるの……?』って。もじもじしながら。そしたら男の子が『わ、
「ちょっと待て小佐田」
その話の展開は結構まずそうだ。
その先はヘタしたら、『ねえ、わたしと試してみよっか……?』的な展開になりかねない。なりかねないしなっても構わないのだが、それをなぜか小佐田の口から聞きたくない……。
朝から
そして、そのうちその理由に思い当たったらしく、ボンッ、と、顔を
「……うわあ、え!? ええっ!? ち、ちがうの! そんな風にしたかったわけじゃなくてねっ! あの、単純に、『蓮くんも、男の子なんだね。いつまでも子供かと思ってたけど……』『は、はぁ!?』みたいな、その、昔一緒にお風呂に入ってたような人にもいつのまにか男の子の部分があるんだなあと実感するだけと言うか、別に、そんな……!」
そして、「んんんんん……!」と顔を真っ赤にして、
「っていうか、そんなこと思う蓮くんがえっちだよ!」
と叫んだ。
「おれ、何にも言ってないんだけど!?」
「でも思ってたじゃんっ!」
くそ……!
風邪は治ったはずなのに、顔が
「なあ、小佐田……。やっぱり幼馴染研究は朝だろうとなんだろうと
「そ、そだね……ごめんね……悪いのは蓮くんだけどね……」
そして2人してなんとなく相手の顔を見られないまま、学校まで静かに歩いていくのだった。
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