四、森のひとと人間の姉弟
親子の姿が闇にまぎれて見えなくなると同時くらい、反対方向から背の高い影ひとつと小さな影がふたつ、やってきた。
茶髪の男のコは、十に満たないくらいなのに勇ましく木刀を下げてた。あちこち破けた服に顔の絆創膏、キラキラ輝く青い目から、やんちゃ具合が良くわかる。
女のコのほうは少し年上かな、金髪を二つに分けてリボンで結んでいた。茶色の目はやっぱりキラキラ輝いてて、女性を見あげながらおしゃべりに夢中。
静かそうな雰囲気の
なんとなく、木刀を振り回しながら森を駆ける男のコとそれを追っかける女のコが目に浮かんで、胸があったかくなる。
男のコはどんなに言って聞かせても無茶をやめそうにないし、生傷が絶えなさそう。
それでも
こんな遅い時間にどこへ行くのかな。
森に向かっているのか、街に家があるのか、余所者のわたしじゃ方向から判断することはできなかった。
森の民とも言われる
種族として医術に長けた彼らも、生まれつきの欠損は治せない。それができるのは世界中捜しても五本指で足りるくらい少ないんだって。
無力でごめんね、って先生はいつも謝るけど、わたしは間違いなく先生の優しさに救われてる。部屋にいないのを知ったら、先生は心配して自分を責めちゃうかな。
通りすぎていった彼女のはにかみ笑顔は、先生がわたしに向ける表情とどこか似ていた。
誰のせいでもないの。
パパのことも、ママのことも、先生のことも、大好きよ。
だから泣かないで、自分を責めないで。
わたしは、あなたたちから逃げたいんじゃない。
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