第21話 こだわり
「結局、3人中1人しか成功しなかった原因は突き止めたのか?」
「それについては、いくつかの要因が重なって出た結果で、確定で『こういう原因』とは言い難いですね」
ルーヴの返答にフィアットさんが顔をしかめる。
「簡単に説明できんのか?」
「簡単に……。そうだなー、『素質』のあるなしかなー」
「素質?」
「魔法にしろ魔術にしろ、素質がなければ扱えません」
「ちょっと待て」
ルーヴの説明を遮るようにフィアットさんが言った。
「『素質のない者を
「説明は最後まで聞いて下さいよ、せっかちだなー」
「フィアット、少し黙っていろ。ルーヴ、続きを話せ」
ボスがフィアットさんを黙らせてくれた。
「僕が言いている素質とは、魔法や魔術の素質とは少し違います。それを持ち合わせていれば、そもそもこんな事をしなくて修行で会得出来ますから」
「それで、必要な素質とは何だ?」
「真理に触れる為に使う魔術師と同じ属性特性を持つ事です。僕等は魔術師を使って真理に触れさせます。この魔術師と血液を介して被験体を接続し、魔術師としての素養を被験体に
「……、よく分からんが、その魔術師と同じ属性特性を持っておかなけれなならないという事か」
「その通りです、ボス。ボスに調達してもらった魔術師はどれも暗黒種族。つまり、闇属性です。闇属性の特性を持っている者しかダメだって事です」
「なる程」
「実験の準備ができました」
僕はルーヴが説明している間に、全ての準備を整えた。
「1つ質問しても?」
ボスは遠慮がちに僕へ訊ねた。
「はい、どうぞ」
「人工魔術師を作る為のこの……、儀式というか、施術と言うか、これ1回で造れる人工魔術師は1人なのか?」
「今回は2人ですが、器具を使えばもっと増やせると思います。ただ、その場合は血液の相性も考慮する必要が出てきますが……」
血液を介して接触していれば、人工魔術師に出来る。
今回は魔術師の両掌を
理論的には、魔術師の血管に管を通し、その管を被験体に刺すという形でも人工魔術師は製造出来る筈だ。
管を二股、三俣と増やせば、それだけ多くの被験体を人工魔術師へ出来る。
「もう一ついいか?」
「何でしょう?」
「パスになった魔術師はどうなる?生きているのか?」
「ええ、生きています。生きてはいますが、いわゆる植物人間になります。真理に人格が吸い取られるのでしょう」
「つまり、魔術師は使い捨てか」
「接続する被験体は無限に増やせます。やる価値はあるかと」
「……、確かにそうだな。手を止めさせたな、すまない」
「いえ。では、始めます」
僕は機械の作動スイッチを押した。
†
「うむ……、やはり反りがもう少し浅い方がいい。どうも抜刀の感覚が馴染めないな……」
俺は藁を束ねた
「刀の重心が前にあるお陰で、剣先の速度はソハヤの時よりも増したが、若干制御しづらい。まぁ、要は慣れなんだろうけど……」
「けど、普通に戦えるなら問題ないんじゃない?」
「それはそうなんだが……」
納得は出来ていない。
この刀を信用しきれていないのだ。
こんな状態でルインと対峙しても勝てないだろう。
何より、魔術で自分を瞬間的に強化して繰り出す抜刀斬りも、この刀では無理だ。
1回で刀がダメになる。
「やはり……、ゲンシンの爺さんが作った刀じゃないと無理か……」
「結局、遺作を探すんでしょ?だったら、情報収集でもしたら?」
「そうだな……」
俺は巻藁を片付け、もう一度刀鍛冶の爺さんの所を訪ねた。
「何じゃい、今度は?」
「アンタ、ゲンシンについて何か聞いた事はあるか?」
「前にも言ったが、何も知らん。儂もこの部族内では長生きの方だ。ゲンシンなどと言う刀工が一度でも我等の部族に合流したのであれば、知っておる筈じゃ」
「つまり、ここには来たことがないと」
「恐らくの。
「それは知り合いに調べてもらっている」
「だったら、ここではそれ以上の情報は手に入らんぞ」
「そうか……」
「で、その刀はどうだ?」
「まぁ……、馴染むまでには時間が掛かりそうだ」
「じゃろうな。ソハヤは特製だったのだから仕方あるまいて」
「吠様」
名前を呼ばれて振り返ると、豹が立っていた。
「豹!何しに来た?」
「吠様のご様子のお伺いと、ご報告がありまして」
「久しぶりね、豹」
「エルウィン殿もお元気そうで」
「何じゃ、草の者か」
「草の者?」
聞きなれない言葉だ。
「
「なぁに、俺はただの旅人だよ。豹、話は外で」
俺達は刀鍛冶の爺さんに礼を言って、その場を後にした。
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