第11話 躍動の始動
俺は蛇の一員の様に過ごしていた。
常に隣には
基本的にはタイパンが現場を仕切っているのだが、そのタイパン自身が村に潜入しているので、今は豹とシロの2人が指揮を執っている。
豹とシロで問題なく進んでいるが、いちいち俺に確認を取るのが律儀と言うか、真面目と言うか……。
「それで問題ないだろ。俺に聞く暇があったら、さっさと実行しろよ」
この台詞を言うのも何度目か分からない。
「しかし、現状を最も理解し、分析出来ているのは
「私も御当主と同意見です。我々は諜報には長けていますが、表側の戦略までに気を回せません」
「俺を褒めても何も出ねーぞ。それより、タイパンからの連絡はどうした?」
「1週間前の連絡以来、音信不通です」
「アイツに限って消されたって事はないだろうが……。深くまで潜ってる可能性もあるな」
「はい。施設の全容を掴むのも時間の問題かと」
「だといいんだが」
タイパンの実力を軽んじている訳ではない。
むしろ、タイパン程の実力者なら研究施設の全容を暴けるだろう。
豹が言う様に、問題は時間だ。
どれだけ早く暴けるかで、
早期に判明すれば、それだけ早く潰せる。
そうなれば、兵隊も強気の運用が可能になる。
「豹、
兵隊の育成もある程度進んでいる筈だ。
数ではまだ劣っているが、いざという時には蛇と連携させればそこそこの数的不利をひっくり返す事も出来る。
「正直、あまり進んでいません。もう少し兵隊の練度が上がらなければ難しいかと……」
「練度はその内上がる。今の内から様々な状態を想定して、
「承知しました」
「シロ、こちら側についた元老会メンバーとの連絡は蜜にしておけよ。土壇場で離脱されても困る」
「そこは黄様もご懸念でしたので、抜かりなく。それぞれに監視も付けております」
「ならいい。さて、ここからどう動くかだな……」
正直、現状でこちらから手を出す手段がない。
下手に動けば潰される可能性が高く、だからと言って手をこまねいている訳にもいかない。
今は蛇達からの情報待ちしかない。
「手詰まりですかな?」
振り返るとタイパンが立っていた。
「タイパン!?何故ここに!?」
豹が驚いた声を上げる。
「今は例の村に潜入していたんじゃないのか?」
「主殿、村じゃ優秀な成績の奴には休暇が与えられるんだ。まぁ、国境付近の何もない村だからな。たまに外に出してやらんと、兵士も言う事を聞かなくなる」
「それで、休暇を利用して戻ってきた訳か。って事は、何かしらの報告があるのだろ?」
「流石、主殿だ。話が早い。地下施設の全体像と、主目的が判明した」
「全体像と主目的……」
「まず、全体像なんだが、ありゃ馬鹿デカいぞ」
そう言って、タイパンは地図を広げた。
「あの大きさなら、街くらいはすっぽり入っちまうくらいだ」
「そんなにデカいのか?」
となれば、上将軍があの木こりの町の地下に造らせている施設と同等かそれ以上という事になる。
「まだ部分的にしか稼働していないみたいだが、兵士の訓練所もある。あれは研究施設じゃなく、国の中枢となる機関を集めるだけの容量はあると思った方がいい」
「つまり、
「暗黒種族、と言うよりも魔王軍残党とも連携している事から考えれば……」
「奴自身が新たな魔王になろうとしているのか……」
「恐らく……。稼働している研究区画で、屍喰鬼の量産に使用しているのは3割しかない」
「つまり、残りの7割は、蒼狼が魔王化する為の研究か……」
「確証はないが、状況からみればそう考えられる」
あの幼い
だとすれば、西部で暗黒種族の活動が活発になっている理由もつく。
王国内の魔王軍残党、及び暗黒種族は西部に集まってきているのだ。
「豹、この情報を上将軍と共有しろ。ただし、手を出さない様に言っておけ。中央軍が早期に出しゃばって敗走でもしたら、この国はなくなる」
「御意に」
「全く蒼狼の野郎……、とんでもねー事考えやがる……」
俺はギリリと歯を食い縛った。
「主殿、魔王軍残党が集まっているとは言っても、まだ少数だ。軍として動いている残党はまだどこも合流していない」
「叩くなら今の内って事か……」
「あの施設は早々に潰さないと、それこそ国の存亡に関わる」
「タイパン、お前がいる村の総兵力はどれくらいだ?」
「全部合わせりゃ1万くらい。その内、訓練中が500くらいだ。主力となり得るのは1000程で、後は一般兵以下だ」
「豹、黄に連絡して、5000の兵を出させろ。精鋭から5000だ」
「御意に」
「タイパン、お前は村に戻って、施設への侵入ルートを確立させろ。それと、村内部での工作だ。まともに戦わせるな」
「承知」
各員がテキパキと動き始めた。
決行は5日後に設定、初めての大規模戦闘になる。
俺は一抹の不安を抱えながら、戦略を練った。
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