第8話 カンファレンス
「揃っている様だな」
最後に現れたのは、シロを引き連れた
ここは黄の
集まったのは俺と
「
「全くだ、黄。頭目らしくなったじゃねーか」
俺と黄は抱き合った。
最後に会ったの先代が討たれた時だ。
それから随分時間が経っている。
豹を通してやり取りはしていたが、直接会うのは本当に久しぶりだ。
「お前のお陰で色々と助かった」
「余計な事だったかもしれんがな。今後は共闘させてもらうよ」
「お前がいてくれれば何とかなるだろう」
「楽観的過ぎだぞ。まだ始まってもいないんだからな」
そう、まだ抗争は始まっていないのだ。
蛇と
「まず、私から1つ報告だ」
黄は名簿の様な羊皮紙を出した。
「元老会の8人中6人はこちらに着いた」
「老人を焚きつけるんじゃねーよ、黄」
「だが、このままでは数的不利は覆らん。これでも少ないのだからな」
「で、その残りの2人は?」
「
「確定なのか?」
「ほぼ、確定です」
豹が数枚の資料を出した。
「蒼狼側と思われる
「なる程……。お前の縄張りでも好き勝手やってるみたいだしな」
「何処に連れ行くのか調べる為に、少し泳がせたんだが、調子に乗りやがった。まぁ、あの後あちら側の奴は全員粛清したがな」
「無茶しやがる……。それに、あの町の支部長、完全に蒼狼側だぞ、いいのか?」
「問題はありません、吠様。蒼狼はあの男が我々にとっての楔となっていると思っているのでしょう。全く効果はありませんが、それで馬鹿が安心してくれているなら有用な存在かと」
「あまり蒼狼を侮るな、豹。足元を掬われるぞ」
「はい、申し訳ありません……」
「兵の数も元老会のお陰で3倍くらいには増えた。吠、お前が率いるか?」
「……、いや、俺は蛇と行動を共にする。まだ俺がいる事を悟られる訳にはいかん」
「そうだな……、お前自身が切り札だからな」
「そうそう、取って置きは最後まで残しておくモンだぜ」
「では、兵の訓練、及び指揮は
「それが良い。そう言えば、寅はどうした?」
「ここの入口で警備に当たっている」
「どうせなら呼んでやれよ。一応、これって上層会議だろ?兵を率いる司令官なしじゃカッコがつかんぞ」
「そうだな」
黄は寅を呼んだ。
寅と会うのも久しぶりである。
「失礼します」
「よう、寅。元気だったか?」
「吠様……」
寅は泣き崩れる様に、俺の前に跪いた。
「おい、寅!」
「よくぞ……、よくぞお戻りくださいました……!俺は……、この時をどれ程……」
大泣きである。
「兄者、見苦しい……」
「五月蠅い、豹!お前は早くから吠様のご存命を知っておったのだから、俺の感激が理解出来んのだ!」
寅は豹を怒鳴ると、再び大泣きし始めた。
そう、寅と豹は血の繋がった兄弟だ。
筋骨隆々で感情の起伏も激しい寅と、しなやかな細身で常に冷静沈着な豹は対照的と言うよりも対極的。
ただ、俺や黄に対しての忠誠心はどちらも高過ぎるくらいに高い。
そこは似ていると言えるかもしれない。
「寅、お前に全兵隊の指揮を任せる。時が来るまで、しっかりと鍛えてやれ」
「俺でよろしいのでしょうか、黄様」
「お前以外にいないであろう」
「頼んだぞ、寅」
「ははぁ!御意に!!」
全く、昔から暑苦しい奴だ。
だが、その腕っぷしと忠義には揺るぎがない。
「これで、兵力的にも蒼狼と拮抗出来るか……」
黄は書類を見ながら言う。
「主殿、大変申し上げにくいのですが、拮抗する事は出来ません」
シロが口を開いた。
「何故だ?」
「近々、魔王軍残党の合流が予想されます。そうなれば、兵力差はまた振り出しに……」
「魔王軍残党だと……?」
「俺も見たぞ、黄。例の村にも多少入り込んでる。何故魔王軍が協力しているのか、調べる必要がある。出来るか、シロ?」
「はい。目星はつけていますが、物証がなく……」
「以前受けたギルドの依頼で、魔王軍残党の
「その通りです。しかし、もう少し調べさせてください」
「分かった、その件は蛇に任せる。確証が得られたすぐに報告してくれ」
「御意に」
まだまだ問題が山積みだ。
こちら側についたとは言え、元老会の御老人達が裏切らないと言う確証もない。
蛇の存在がどれ程有難いか、俺は痛感していた。
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