第53話 甘い生活?

 帰って来たサリィンは疲れ切った表情だった。

 ここは中央司令部近くの軍関係者のみが入居できる居住区。

 軍関係だけとは言っても、勤務している軍人とその家族が集まっているので、かなり大きな街を形成している。

 町並みは美しく、治安もいい。

 理想の街と言った感じなのだが、私は何だか落ち着かない。

 それはサリィンも同じなのか、慣れない王都での生活に加え、上将軍の傍付きだ。

 初日の出勤で疲労が顔に出るのも仕方ない。


「お帰り、サリィン」


 私は笑顔で迎えると、サリィンは顔を赤らめた。

 何を照れてるのか。


「なんで赤くなってるの?」

「いえ……」


 サリィンはそっぽを向きながら頭を掻く。

 既に耳まで真っ赤だ。


「だから何よ?言いたい事はちゃんと言いなさい」

「いや、その……、今までは兵舎で同性との集団生活だったの……、セリファ殿にお帰りと言われると……」

「何?嫌なの……?」

「そういう事ではなく!その……」


 一度私の顔を覗き見て、サリィンはモジモジと俯いてしまう。


「その……、可愛いセリファ殿と一緒に暮らすと考えると……、幸せだなって……」


 何なの、この可愛い生き物。

 私は思わずサリィンを抱き締めて頭を撫でる。


「セリファ殿!?」

殿

「え?」

「お互いに呼び捨てにするって言ったでしょ?」

「すみません……」

「敬語も禁止」

「はい……」

「分かってるの?」

「分かった……、セリファ」

「良し!とりあえずお風呂に入って。その間にご飯の準備しとくから」


 そう言って、私は台所キッチンに向かうが、サリィンが私の服の袖を引く。


「?どうしたの?」


 振り返ると赤面してモジモジしているサリィンがいた。


「あのぉ……、一緒に……」


 はぁ?

 可愛すぎなんだが?

 私は笑いながらサリィンをもう一度抱き締めた。



「なんか凄く疲れてるわね、サリィン」


 私はサリィンの腕の中で彼を見上げた。


「え?うん……。流石に、初日は疲れるね……」

「まだ慣れてないからね、街にも職場にも」


 私は手を伸ばし、サリィンの顔に触れる。


「閣下の傍付きだから、守秘義務で喋れない事が増えると思う。ゴメン……」

「何言ってるの?仕事なんだから仕方ないでしょ?それより、閣下からは気に入られてるって聞いてるわよ」

「うん、ガル殿のお陰だけどね」

「自分の実力を少しは評価しなさい。誰の口利きでも、本人の能力が認めらてなかったら蹴られるんだからね」


 どうもサリィンは自身を過小評価するきらいがある。

 何故こんなにも劣等感がこびりついているのか分からないが、上将軍の傍付きをしている間に少しは矯正されればいいんだけど。


「そんな事より、セリファは大丈夫?ここでの生活には慣れそう?」

「う~ん、まだここに来て数日だから何とも言えない……。ご近所付き合いとかあるみたいだからちょっと不安かな……」

「セリファなら大丈夫だよ」

「そうとも言えないわ。サリィンの仕事に迷惑を掛けないようにしないと……」


 そう、この居住区に住んでいるのは全員が軍の関係者。

 誰が誰の家族で、その人の所属と階級がどうだなどを早々に覚えないと、サリィンの職場での評価に繋がるのだ。

 そう言うのは得意とは言えないし、何より表向きはサリィン自身がで中央司令部へ異動させられているのだ。

 それなのに上将軍の傍付きへの抜擢。

 妬まれる理由は山程ある。

 その上に私が何かやらかせば、ここで生活出来なくなるのではないだろうか……。


「はぁ……」

「どうしたの、セリファ」

「ううん、私、ちゃんとやっていけるかなって……」

「大丈夫だよ」


 ニッコリと笑うサリィン。

 恐らく、私が何を心配しているのか、理解していないのだろう……。

 とは言っても、ご近所付き合いを上手くやるというのは私の仕事だ。

 私はそう自分に言い聞かせる。


「よし」


 私は、サリィンの役に立てるように、上手くやって行く覚悟を決めた。

 決心ついでに景気づけだ。

 私は起き上がり、サリンの上に乗る。


「え?セリファ??」


 戸惑った顔のサリィン。


「景気づけよ」


 私をそう言って、サリィンの陰茎を咥えた。


「ちょっと、セリファ!さっきシたばっか!」

「いいじゃない、何回したって」

「明日も仕事なんだよ!?」

「軍人でしょ!それくらいの体力なくてどうするのよ?」


 硬くなったサリィンを私の中へ導く。


「セリファ!ダメだ……、あっ」

「同棲の意味を……、んっ、少しは楽しまないと……!」


 ここでの生活に早く慣れる必要がある。

 けど、それ以上に私はサリィンとの同棲生活を楽しみたいと思った。

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