第39話 欲と道理
「
私は例の事務所へ赴いていた。
一連の出来事に粗方片が付いたからだ。
サリィンの暗殺を狙っていた隠の動きも鈍った。
お陰で私は動きやすくなり、サリィンの周辺警備もある程度緩められる。
「順調か?」
「こちらは何とか。黄様の首尾は?」
「
「それは心強い!」
豪殿は燃殿と並ぶ武闘派で名を馳せた元老会メンバーだ。
先代の時代では、九龍会の
先代への忠義も厚く、何より黄様を目に掛けてくれた方々に他ならない。
時が来れば、必ず黄様にお味方くださる、そう信じていた。
このお二方が本格的に合流してくだされば、他にもこちらに靡く元老会メンバーもいる筈。
「とは言っても、燃殿や豪殿の合流はあちらから見ても予想の範囲内。問題はここからどれだけ他の元老会メンバーを引き込めるかだ」
「元老会メンバーの引き込みは、黄様と
「頼むぞ。戦闘になるのはまだまだ先の筈。今はどれだけ情報戦で優位に立てるかだ」
黄様は戦略などに関しては余り得意ではない。
しかし、何年も
昔であれば、情報戦などに重きを置かず、力攻めしかしていなかっただろう。
ご成長なされた。
だが、策略に関してはやはり
むしろ、
正直、惚れ直した程だ。
やはり、我々には吠様が必要なのだ。
そんな事を考えていると、ある事を思い出した。
「黄様、話は変わりますが、吠様のお仲間にスゥという子供の
「あぁ、報告は受けている。何でも、ルインが育てた隠の見習いだった様だな」
「はい。適性は高過ぎる程に優秀です」
「そのスゥがどうした?」
「私に特訓を申し込まれました」
「はぁ?」
流石の黄様も目を点にされた。
「
「その様で。確かに、あの子は未だ発展途上。鍛えれば私を凌ぐ可能性も秘めています」
「……、吠はどう言っている?」
「いえ、吠様にはまだご報告しておりません」
「そういう事は、私よりも先に吠に聞け」
「いえ、吠様の事です。あの子を
「……、そうだな。アイツの事だ、その子には
「しかし、本人たっての希望なので、無下に断る事も出来ず……。とりあえずは保留にしております」
「……、私としてはお前の後継者が出来る事は喜ばしい事だが……。やはり、保護者の意向を聞くべきだと思うぞ?」
「……、承知致しました」
「フフフ、豹、ホントは欲しいんだな?そのスゥが」
見透かされた。
正直、欲しい。
あれだけのセンスを持った人材はなかなかいない。
それに、まだ子供でありながら、既に隠のメンバーよりも高い域に達している。
まだまだ伸びしろもある。
あの子を育てたら何処まで伸びるのか、見たい気もするのが本音だ。
「欲しいなら吠に直談判しろ。お前の頼みなら、アイツも首を縦に振るだろう」
「……、まずは吠様のご意向を……」
「控え目だな、お前は」
黄様はそう言って笑った。
何とも言い難い気持ちになってしまう。
それより、もっと重要な報告をしなければならない事があったのだ。
「あの子に関しては吠様にお伺いする事にします。それよりも、もう1つご報告を」
「何だ?」
ハッキリ言って、これが本題だ。
「部下を招集しています。半月後には、全て集まるかと……。近くにいた者は既に王国内で活動を開始しております」
「うむ……、助かる。これで5
黄様は頷く。
「黄様」
「何だ?」
「5分ではありません。我等の実力を侮らないで頂きたい」
「すまんすまん、そうだったな。しかし、既に伝説の域。私はお前しか知らんのだ、許せ」
「いえ、これからその実力をお見せいたします。私が最強の称号と共に受け継いだ蛇達の力を」
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