第31話心情の変化と重なり合う二人
「とりあえず……軽く飲むか?」
フィリアは格好こそかなり大胆だが、本人は普段気丈に振舞ってる割に、初心なのか顔を真っ赤にしながらもじもじしている。
ドレスと同じように真っ赤な下着は月明かりに照らされ、かなりの妖艶さを漂わせている。
また、上から桃色のネグリジェを来ているのだが、シースルーで豊満な胸がしっかりと曝け出されていた。
「そうね……」
フィリアは一言呟き、棚に保管された高級そうなお酒のビンと取り出した。
ゴトっと結構な重量感のあるビンに、グラスを二つ並べる。
そして、トクトクと注いでチンっと鳴らす。
「本当に……良かったの? その、わたくしで……」
「いや、それを言うなら俺で良いのか?
別に貴族でもなければただの迫害された魔力無しの男。
言ってみれば平民より格下だぞ?」
「そ、それを言うならわたくしだって魔力無いもの!
だから、あの時本当に絶望的だったんだからぁ!!」
あの時――魔女ベリアローズとの戦いの際、横腹を貫かれた。
魔力がないのに必死に≪ヒール≫を唱え、俺を直そうとしてくれた。
「あの時は、ありがとな。 今まで碌に必要とされてなかった。
魔力がないだけで。 だから初めて感じたんだ。
求められるのって幸せなんだなって」
ゴクっとグラスに入った酒、ウィスキーを流し込んだ。
「わたくしは、今まで何の目標も持たずに自由に過ごして来たの。
魔力が底辺でも、王族である以上皆頭を下げる。
魔力がなくても王族だから婚姻を望む者も多かったわ。
勿論、この容姿もあるけれど……
でも、セン様は王族ではなく一人の人間として接してくれた。
それが本当に嬉しかったの」
フィリアも大小関係なく、大変だったんだな。
「まあ、わたくしよりも大変な思いをしてる人は多いし、王族である以上わたくしの悩みなんて悩みじゃないかもしれない」
「いや、悩みって人と比べるもんじゃないだろ。
まあ、人と比べて当たり前が当たり前じゃなくなった時の絶望感はヤバいけどな。
でも、今はミコトとかフィリアもそう、グランドワイズの王女とか無理矢理干渉してくるヤツもいるけど、意外と楽しんでる自分もいるんだぞ?」
「ふふっ、そうね。 わたくしも……まあ、このような進展をするとは思わなかったけど、でもセン様の事はちゃんと受け止められるわ」
フィリアもゴクっとウィスキーを飲み干し、未だ緊張しているのかもしれないが、少しずつその身を近づけて来た。
「顔が赤いのは酒なのか、それとも恥ずかしいのか……?」
そっとフィリアの頬に手を当てる。
すると、フィリアは少し涙目になりながらも上目遣いでこちらの瞳を見つめ返す。
「ずるいですわよ、それは……わたくしだって羞恥心くらいあります!」
「だよな。 でも、まじまじと見ると綺麗だな」
「っ――!? その、ありがとう、ございます」
フィリアの顔が増々赤らみ、ゆっくりと顔が近づく。
その吐息は誰もを虜にするだろう。
こんなフィリアの姿を見たら誰もが見惚れ、心を射抜かれてしまうのは確実だ。
「フィリア見てたら我慢出来なくなった」
「ふふっ、どうぞ。 後……フィリっと呼んで欲しい」
「分かった、フィリ」
名を呼ぶと嬉しそうな笑顔でフィリアの方から唇を塞いで来た。
チュ
チュ
何度も優しく唇と唇を重ね合わせていく。
「わたくしのファーストキス、如何です?」
「初めてとは思えないな」
「良かった」
再びキスを交え、次第に舌を絡めていく。
「んふっ……はぁ、これが大人のキス……はぁ、んんっ」
そして、徐々にフィリアの男を虜にするその身体に触れていく。
サラサラとした白い肌、細い腰回り、しかしながらその肌は柔らかく、しっかりと女性特有さを出している。
また、豊かな二つの果実はハリと弾力が最高峰。
押せば沈み、離せば戻る。
しかしながら柔らかさはまるで母性の塊であり、安心する。
「んんっ、セン様……あっ、身体が熱い……」
「綺麗だな。 良い香りもするし……溺れそうだ」
「んふっ……ああっ、そんなっ……ダメっ……」
次第にセンの手付きに緩急が生まれる。
まるで寄せては返す波の様に――
「セン様っ……もう……」
「フィリから求めるか。 まあ、俺もそろそろ限界に達しそうだったから丁度良い」
「あっ、優しく……んんっ……ああっ!!?」
・
・
・
「はぁ、はぁ……セン、これが大人なのね……」
いつの間にかセン様からセンに昇格。
それだけ気を許したのだろう。と言っても、身体を許した時点で気は許してると思うが。
「ん? どうだろう。 まあ、大人の階段は上ったな」
「凄く幸せな気持ちになるのね……でも、同時に寂しさもあるわ」
「かもな。 なら、まだ続けるか?」
「まあ、センが野獣に変わったわ。 なら、討伐しなきゃね」
どうやらフィリアもその気はあるらしい。というか、戦闘もそうだがフィリアはかなり体力があるようだ。
「なら、もう一回くらい」
「んんっ……」
既に準備は出来ていた。
というか、これ……治まるのか?
・
・
・
「おはよう、セン」
チュンチュンっと小鳥の囀りが響く朝。
昨夜とは違って窓から日の光が部屋を照らしていた。
当然、横に居るフィリアも、そして俺自身も一糸纏わぬ姿だ。
というか、フィリアに至っては真っ白な柔肌が日で照らされ、まるで神々しいくらいだった。
「おはようフィリ」
フィリアは俺の胸に頭を置き、完全に肌と肌が密着している。
その柔らかさたるや……
「昨日は凄かったわね……でも、やっぱり幸せな気持ちは消えないわ」
「そうかもな。 俺の心も何だか浄化されてる気分だ」
「でも、それ以上にセンへの愛情が芽生えてしまったかもしれない。
わたくし、捉えた獲物は逃がしませんわ」
「おいおい、怖いぞ。
まあ、フィリにそこまで言われるのは嫌じゃないが、今はまだ我慢してくれ」
「仕方ないですわね」
「とりあえず任務も終わったし、俺は一度森に帰るぞ?」
「ええ、わたくしは今回の戦で命を落とした者も多いですから、それの対応など出来る事をやりますわ」
「とりあえず起きようか」
「ええ」
身支度を整え、部屋を出る。
そして、謁見の間へと向かうと既に皆が集合していた。
「おお、待っておった。 昨夜は楽しめたか?」
「はい、お父様」
「そうか、良かった良かった」
王は娘の貞操が奪われたのに何故か嬉しそうだ。
「やったわね、フィリ」
そして、姉のクラリアもフィリアを褒める。
しかし、ミコトだけはムスっとしていた。
「ミコト、どうした?」
「どうしただと!? 他の女を抱くなんて許せん! いや、だがフィリアならまあ、許すしかないのか……うう」
「ミコト様、センは誰のものでもないわ。 なら、平等に愛せるという事ですわね? 一緒に手を組みましょう」
「おお、フィリア! それは妙案だな! ライバルではなく、仲間として力を合わせようではないか!」
どうやら問題は早期に解決した様だ。
その方法は如何なものかと思うのだが。
「改めて、今回の事件……沢山の命が失われた。
これより騎士の遺族達のケアに入れ。
各自、しっかりと動く様に」
「「「はっ」」」
「俺は森に戻る」
「そうか。 もはやミューロンはセン殿達を英雄として扱う。
力になって欲しい時にはいつでも来てくれ。
勿論、力を必要とする時は声を掛けさせてもらうがな」
やはり王。 国の為に利用出来るものは利用する。
しかし、力になってくれるとも言った。
今までの国はこっちの都合は一切無視だったからな。そういった意味ではまあ悪い気はしない。
「セン、必ずまた会いに来てね?」
「ああ、それは約束するよ」
「ありがとう」
フィリアは少し悲し気な表情を浮かべていた。
これも、寂しさの表れなのだろう。
「我が友よ、いつでも遊びに来て欲しい!
いや、寧ろ私も蠱惑ノ森へと赴こうではないか!」
「ああ、まあ程々に頼むよ」
ミューロンの人間達はこれまで出会って来た人間とは違う。
勿論、ライナやセリアはこちら側に含まれるが、こうした出会いもまた、人の性格などを構築する上で重要な要素になるのだろう。
俺は魔力が無い事で迫害され、殺されかけた。
もうその国は無いが、倭国へ戻ったとすればまた同じ事になるのだろう。
とは言え、昔と今は違う。
歪んでしまった性格もあり、今更罵られ、罵倒されたとしても何も感じない。
それはこれまで重ねた鍛錬の成果でもあるのだが。
こうして俺はミコトを連れて蠱惑ノ森へと向かった。
ミラーナはジュベルと話し、一度ミネリアーナへ行くと言っていた。
元々故郷でもあるから姿が戻った今、改めて魔女という存在の理解を得たいのだとか。
「なあセン」
「何だ?」
「フィリアを抱いた訳だが、結局の所恋心は生まれたのか?」
「恋心……どうだろうな? まあ、感覚で言えば〝生まれてない〟だ」
「うむ、センの心を完全に溶かすのはまだまだなのだな」
「かもな」
過去、恋人が取られ、その当人が敵になって俺を迫害した。
そんなトラウマが簡単に溶けるとは思えん。
だが、それはそれ、これはこれで考えれば少しは前向きになれた。
「とりあえず今日は私をたっぷりと堪能してもらうからな!」
「ええ、疲れたから嫌だよ」
「黙れ、私だって寂しいのだ! ましてフィリアを抱いておいて!
貴様に拒否権はない!!」
うわっ拒否権無しとかどんだけ嫉妬してんだよ。
はぁ……今夜は体力を全て吸い取られそうだ……
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