第11話ミコトの過去


私の名はミコト。


本名は倭国にて、柳御琴やなぎみこと


元は倭国の柳家で剣を学び、何れは帝をお護りする武士として仕えるつもりだった。


しかし、女という事もあってか柳家からは私の兄、たけるが武士として仕える事となってしまった。


基本的に一家から一人しか仕える事は出来ない。


それは、家名が偏る事で暴動が起こる可能性を引き上げるからだ。


その為、各家から一人ずつが武士として帝に仕えるというのが倭国での風習だ。


そして私が15歳の時。



「父上、お話があります」



「どうした美琴。 そうか、お前も女だ。 そろそろ嫁ぎ先を決めねばならんな」



屋敷の大広間で正面には父であり柳家の当主、柳宗政やなぎむねまさが座る。


その正面に私が座り、周囲には数名の家臣が控えていた。



「いえ、婚姻の話しではなくてですね。 私自身これまでは武士を志、鍛錬を重ねて来ました」



「確かにお前は道場で一番強い。 性格も男勝りでどうしたものかと悩んでおったくらいだ」



うっ、そこに関しては申し訳なく思う。


何分、母上も男勝りで柳家は嬶天下。


勿論、表面上では当主を立てるのだが、基本的に母上には誰も逆らえないのだ。


その娘たる私も性格上そういった気質が当然ある訳で……昔から男達の中で育ち、武芸に励み、今に至る。



「それでですね、私も先日15になり成人を迎えました。

そこで、武士にはなれずとも武芸から離れる気は毛頭ありません。

ですので、ハンターとして一層の武を磨きたく思います」



「ふむ、ハンターか……」



「はい。 自分の実力を高め、名を広めれば武士への道も開けると思ったのです」



「そうか……本心としては合意は出来ぬ。 だが、お前は頑固だからなぁ」



どうしたものか、と父は顎に手を当てながら考える。


そして――



「ではこうしよう。 期限は20歳までの5年。

この5年で銀級のハンターになってみろ。

それが叶わなかった場合、少々出遅れではあるが黙って嫁いでもらうぞ」



「あ、ありがとうございます!父上!」



「全く……もう少し女らしく生きて欲しいものなのだがな。

お前は性格こそあれだが、美人だ。 気を付けろよ。

世の男は魔物よりも恐ろしい事もある。

精進する様に」



「はい。 父上も私の名が轟くまでは元気でいて下さい」



こうして私はハンターを目指す事となった。


初めは倭国のギルドで登録を終え、簡単な依頼を熟していった。


実際に討伐などに関しては元々実家での習わしもあってか、難しくは無かった。


また、新人潰しや女だからと舐めて掛かって来るハンターも全て返り討ちにした。


そうしていく内に階級も上がり、17になった頃には〝倭の女神〟と呼ばれるようにもなった。


この頃、よく一緒に依頼を熟していたパートナーがいて、かなり充実したハンターライフを送っていたと思う。


ちなみに、初めて身を捧げたのもその人だ。


しかし、ハンターとはやはり命懸けの職業。


ある依頼を熟している時、たまたま通りかかった別のハンターチームと野営をしていた。


別に他の男が襲ってくると言った事はなかったのだが、逆に女のハンターが私のパートナーに夜這いを掛け、俗に言う寝取りを働いたのだ。


その時、父からの言葉を思い出した。



〝世の男は魔物よりも恐ろしい事もある〟



まさにそうだった。


ただ、唯一の救いとしては私自身この人と婚姻を結ぶといった気持ちもなく、恋人でもなかったという事だ。


仕方なく私は一人野営地から離れ、今度は倭以外の国へ行こうと考えた。


後に聞いた話だが、パートナーを寝取った女が率いるハンターチームと、そのパートナーは別の依頼時にドラゴンの群れと遭遇。


そのまま帰らぬ人となったらしい。



で、訪れたのはグランドワイズ国などがあるクランベリア大陸。


新天地でのハンター業はかなり気分が上がった。


知らない街、魔物、出会い、それはもう楽しみで仕方がなかった。


だから必死に、名を広げる為に奮闘した。



「すまない、初めて来たのだが何か良さそうな依頼はないだろうか?」



グランドワイズ国のギルドにて、受付嬢に尋ねる。


すると、「もしかして……倭の女神、ミコト様でいらっしゃいますか?」


灰色の袴に真っ赤な着物。


腰に据える二本の刀。


黒く艶のある長い髪を束ねて柔らかな表情のハンター。



「ミコトは私だ。 この大陸は初めてで、良ければ依頼を見繕って欲しいのだ」



私の名はグランドワイズにも広がっていた。その事実に歓喜しつつも表情には出さず、受付嬢にお願いをした。


すると、「こちらへ来て頂けますか?」と言われた。


何だろ……わざわざ応接で話す事でもないと思うのだが……



そして応接室では茶が出され、受付嬢と恐らくギルドノマスターであろう女性が目の前に座った。


茶色く長い髪を巻き、キリっとした気の強そうな女性だ。


見た目からして貴族上がりなのだろうか?



「ごめんなさいね、突然呼んでしまって。 私はグランドワイズ国のギルドマスター、エレン・フロードよ」



「ミコトです。 正確には柳美琴ですが、今はハンターとして活動しているので、ミコトで」



「そう、どうやらのようね」



エレンが受付嬢と顔を合わせ、何やら意味深な発言をする。


本物、とは?



「実はね、最近倭の女神を名乗るハンターが多くてね。

いえ、ハンターだけじゃなくてもなんだけど……」



「という事は……」



「あなたの、という事になるわね」



「そうでしたか。 まあ名が広がれば少なからずそれに肖ろうとする者も出て来るかとは思いますが、まさか実際に自分がその立場になるとは……」



「あら、何やら嬉しそうよ?」



いかん、つい喜んでしまった。


とは言え、偽物が悪事を働いた場合はこちらも汚名を被る事になる。


どうしたものか……



「倭の国なら私の顔が割れているから見分けは付くであろうが、見知らぬ大陸の場合は偽物が本物と認識されているかもしれないですね」



「そうなの。 実際に本物のあなたを見てオーラだったり、顔立ちで確信を持てるけど、そうもいかない事は当然あるわね。

だから一つ依頼を受けて欲しいの」



「はぁ、依頼ですか?」



「ミコトさんは今赤色ハンターよね? ワイバーンの討伐をして、その死体をそのままグランドワイズ国へ持って帰って来てほしい。

勿論、一人で行かせるなんて事はしないし、出来る事はさせてもらうわ。

どうかしら?

ワイバーンを討伐してくれたら階級も一つ上げられるしね?」



ワイバーン……ドラゴンではないが、厄介な魔物だ。


それに、実際のワイバーン討伐は赤ではなく、一つ上の黒級が条件になる。


けど、討伐を成功させれば黒になれる、か……


これは乗るしかなさそうだ。



「分かりました。 しかし、何故ここまで?

実際に本物でも偽物でも、ギルドに迷惑が掛かる事はあまりない気がするのですが……?」



悪事を働いてもそれはハンター個人の責任となり、寧ろそうなれば困るのは私自身であり、ギルドに損害はない。


だからこそ、気になる部分なのだ。



「そうね。 確かにこちらに害はあまりないわね。

実はグランドワイズのギルドってハンターこそ多いけど、黒以上の階級になる者が少ないの。

他の大陸のギルドだと、金色、銀色、メアリアル大陸には七色がいる。

でも、グランドワイズには黒までしかいない。

まあ、平和って事もあるからなんだけど、それでも一人くらい欲しいじゃない?

英雄が」



英雄。


確かに素晴らしい響きだ。


だが、そう簡単になれるものではないのは明白。



「それとね? 私は昔あなたのお母さん、琴葉ことはにお世話になったのよ。

だから恩人の娘が汚名を着せられるなんて許せないもの」



「なんと、母をご存じだったのですか……!?

なるほど、分かりました。

母上には逆らえませんし、母の知人の頼みであれば断る理由もない。

宜しくお願いします」



こうしてグランドワイズノギルドマスター、エレンからの依頼を引き受け、翌日にはワイバーンの住むグランドワイズから南東へ進んだ



ルガーナ山脈


麓には森が生い茂っているのだが、山を登れば基本岩などしかなく、荒野にも似た雰囲気が漂っている。


山の中腹上がり迄は馬車で登る事が出来たが、以降は全てが険しい山道だった為、歩いてワイバーンの住処まで向かう。


しかし、同行している者達はワイバーンを運ぶ為に依頼された為に戦闘への参加は皆無だった。


その為、全ての戦闘は私が一人で行った。



「はっ!」



鋭い剣閃が魔物の首を刎ね、斬り伏せていく。



「今日の食材はこれでいいだろう。 誰か、調理を頼む」



「はいよ! しっかし倭の女神は美人な上に強いな!」



「バカ、強いから二つ名が付いてるんでしょうに。 ミコトさん、料理は私がしますね!」



エレンの計らいで、女性も同行してもらっていた。


リーンと言う女性は魔物の生態研究を行なっている人で、見た事がない魔物の事もしっかりと教えてくれた。


また、生態調査の為に様々な場所へ赴く為、こうした山でも既に慣れているのだとか。



「ん~、美味しい! はい、ミコトさんもしっかりと食べてね?

明日にはワイバーンの住処に到着するから」



「はい」



山から見る夜景は素晴らしい。二つの蒼い月が輝き、その周囲にも沢山の星々が世界を照らしている。



「しっかし、エレンさんも結構無茶な依頼出すよな?

ミコトちゃんが強いからってワイバーンとは。

せめて戦える人材も呼べばいいのに」



「そうね。 ミコトさん、大丈夫そう?」



二人の男女が心配して訪ねて来る。


本当に良い人達で良かった。だからこそ、戦闘に巻き込むわけにはいかない。


討伐出来なくても、守らなければと心に決めた瞬間でもあった。



「大丈夫だと思います。 何かあれば守りますので」



「ありがとう。 でも無理はダメよ?」



「はい」



そして翌日、ついにワイバーンの住処へと到着した。


手前で同行してくれた人達は待機してもらい、一人でその住処へと足を踏み入れる。



『グルルゥ』



「ようやく出会えたな、ワイバーン! お前には悪いが討たせてもらうぞ!」



『グギャァァ!!』



ガン、ガンっと大きな音を立てながら器用に爪で突進し、ガシっと口を開けて噛み付いて来る。



「はっ!」



それを冷静に躱して刀を抜き、振るう。



バシュ!



『ギャギャァァ!!』



ミコトの初太刀はワイバーンの頬辺りを斬った。


しかし、傷は浅い。



『グァ!!』



すると、ワイバーンは口を開けて炎を吐いた。



「なっ!?」



咄嗟に顔の前に両手を固めて防ぐ。


すると、その隙に突進して来た事でドゴンっとミコトは吹き飛ばされてしまった。



「ぐふっ!?」



油断した。いや、むしろ助かったのか……本気の炎であればこちらも火傷では済まなかっただろう。


ワイバーンは突進してミコトを吹き飛ばしたまま、住処の外へと出てしまった。



「同行してくれた者達が襲われる前に行かなければ!」



ミコトの着物は先ほどの炎で至る所が焦げ付き、直で受けた両腕は火傷を負っている。


更に、突進を喰らった事で背中がズキズキする。


その痛みに耐えながら外へ出ると、どうやら同行した連中は気付かれていないようだ。


だが、まるでミコトを待っていたかの様に空を旋回し、出て来た瞬間を狙って襲い掛かってきた。



『グギャウ!』



一気に急降下してその爪を振るう。


更には尻尾を撓らせ、鞭の様にミコトへ叩きつけた。


ギン!


ギン!



「くはっ、さすがに防いでも威力はそちらが上か……なら!」



シュっと体制を整え、近くの言わばを駆け回る。


そして――



「―命の素たる魔の息吹よ、眼前たる怨敵へ裁きの雷を与えん。

轟雷の如き幾千の神槍、悪しき我が敵を滅せよ! ≪サンダーランスレイン≫!」



ミコトの詠唱によって上空は黒い雲に覆われ、周囲の変化にワイバーンが警戒を始める。


しかし、その場から逃げようともしない以上、もはやワイバーンに神からの審判が下る。



ピカっと眩い閃光と共に詠唱通り神からの裁きとも言える大きな雷がワイバーンを撃ち抜いた。


更に、それは一度ではなく幾度となく繰り返される。



ズギャン!


ズギャン!


ズギャン!



『ギャギャギャギャァァ!』



そして最後の雷が降り注いだ時、ミコトは透かさず刀を抜いてワイバーンへと飛び掛かった。



「はぁ! 雷纏一閃らいてんいっせん!」



ミコトの抜いた刀が避雷針になり、刃に雷が纏う。


そして、一閃。


ズドンっとワイバーンは絶命し、地に落ちていった。



「ふぅ、終わったか。 お~い! 終わりましたよ!」



待機している同行組へ合図を送ると、ぞろぞろと五人が出てくる。



「さすがミコトさん! 最後の一撃はかっこよかったですよ!」



「ああ、あれは最高の場面だった」



「流石にそこまで言われると照れますね。 では、運びましょうか」











討伐したワイバーンを荷台に乗せ、ミコト達がグランドワイズへと向かった二日後、グランドワイズのギルドでは不穏な動きが見られていた。



「ちょっといいかしら?」



「はい、どうしましたか?」



「私、と言うのだけど、依頼を受けたいの」



「は、はぁ……」



「聞いた事ありません? と」



グランドワイズのギルドでは、偽物らしき人物が依頼を受けたいと、受付に立っていた。


この時、受付を担当していたのは本物のミコトを担当した時とは別の者であり、寧ろ新人だった為にどちらにしてもあまりハンターの知識が無かった。



「少々お待ちいただけますか?」



「早くして下さる?」



そして新人の受付嬢は裏へと駆け、中に居た先輩に助力を求めた。



「リサラ先輩! あの!」



「あら、ミーヤ? どうしたの?」



「その、ミコトって人が依頼を受けたいと……何か、倭の女神とか言ってましたけど……こういう時ってどうすればいいんですか?」



「ふ~ん。 飛んで火に入る虫って事ね。 良いわ、私が対応します」



「すいません」



リサラと呼ばれるギルド職員、実際にミコトを担当し、ギルドマスターであるエレンと共にワイバーンの討伐を依頼した張本人だ。


リサラが受付へと向かうと、そこには如何にも不機嫌そうな表情で佇む女性が居た。


灰色の袴に黒い着物を着た女性。


しかし、神は黒くなく、金髪だ。


明らかに倭出身ではないだろう。



「お待たせしました。 彼女は新人なものでして、以降は私が承ります」



「そう、倭の女神を知らないなんてギルド職員としては失格よ?

気を付けてちょうだい」



「すみません。 それで、依頼をご希望という事でしたが?」



「ええ」



「どの様な依頼をご希望でしょうか?」



「報酬が高いものが良いわね。 ただ、今はちょっと怪我をしてるから討伐する魔物は簡単な方が好ましいわ」



「なるほど。 でしたら……そうですね、ワイバーンとかはどうでしょう?

報酬もかなり高いですし、一頭であれば《・》余かと」



「わ、ワイバーン!?」



突如、ミコトと名乗る女性は冷や汗を垂らしながら驚いていた。


(だって実際にミコト様はワイバーンの討伐に出てるし……)



「も、もう少しランクを下げてくれる? さっきも言ったけど、怪我で本調子じゃないのよね?」



「そうですか……なら、こちらはどうでしょうか?」



リサラが渡したのは赤級の依頼書。


〝ツインホーンウルフの討伐依頼〟



灰色の毛並みに馬ほどの大きさの狼。


しかし、その特徴は頭部に生える日本の角だ。


まるで牛を彷彿とさせる太い角は敵を抉り、投げ飛ばす事もある。


その上で肉食であり、群れで行動する事でかなり危険視されている魔物なのだ。



「こちら、近くの山を縄張りにしてまして、目撃情報では5体となっております。

こちらの討伐であればワイバーン一匹よりも楽かと」



「あ、ああ……なかなかの報酬、ですわね……」



何故か依頼書を見ながらプルプルと震えるミコトと名乗る女性。


すると、何やらギルドの外が騒がしくなっている事に気付いた。



「何かしら……あっ、ここに依頼書並べておきますので、選んで下さいね」



「わ、分かったわ」



リサラは数枚の依頼書を受付に置くと、騒がしくしている外へ様子を見に行く。


すると――



「おお、只今戻りました!」



「あら、ミコト様! お帰りなさいませ。 そして、依頼を無事に熟したようですね」



「なかなかの強敵だったが、無事に討伐出来た」



ミコトの後ろの荷台には既に絶命している大きなワイバーンの亡骸がある。


周囲の住民も実際にその姿を間近で見るのは初めてらしく、興奮気味に見学していた。











「あれが倭の女神、ミコト……」



「そう。 あれがのミコトよ。

何故貴女が偽りを語っているのかは知らないけれど、ああして本物が世間の目に触れた以上、名を語って活動するのは無理だと思うわよ?」



「あ、あなたは?」



「ん? ギルドマスターよ。 今度からはちゃんと本当の自分で活動する事ね。 じゃないと無理矢理ワイバーンの討伐に行ってもらうわよ?」



その言葉で実際に討伐されたワイバーンの亡骸へ視線を送る。



「む、無理です……すいませんでした」



「お金が欲しかったんでしょ? でも最初は報酬の低い依頼しか受けられない。

あら、あまり姿を知られていない上級ハンターを語って依頼を受ければ、そう考えたのでしょう」



「はい……でも、実際に強い訳じゃなくて……」



「これに懲りたら地道に頑張りなさいな」



「はい……」












「今回はしっかりと成功したようね。 嬉しいわ」



「はい、問題なく討伐も出来ました」



「ミコトさん、ありがとう。

偽物問題も無事に解決したわよ」



「あれ、いつの間に……」



そんな話をしていると、リサラが一人の女性を連れて応接室に入ってきた。



「あの、ミコトさん……その、すみませんでした」



中に入って来たのは金髪の女性。


先程、エレンに諭され、どうしても謝罪がしたいと応接室へと訪れたのだ。



「実は――」



貧困層は沢山いる。そして、そこからハンターとしてお金を稼ぐのも最初は報酬が少なくかなり大変だ。


そういった現状も踏まえ、事の発端をしっかりと話すと、改めてミコトに対して謝罪をした。



「構わない。 まあ悪行を働いた訳ではないし、私に何の被害もないからな。

寧ろ、階級が上がってラッキーなのだ」



「良かった……良かった……」



聞けばこの女性はシャナと言い、病の弟を養うためにハンターとなったらしい。


しかし、弟の看病もあり、思うように依頼を熟す事が出来ない。その時にギルドのカウンターで男達が倭の女神の噂話をしている所を耳にしたのだ。


自分も外見は悪くない。なら、倭の女神に扮して依頼を熟せないだろうかと考え、今に至るのだとか。



「そうだったのか……でも真っ当でなければ弟さんは悲しむだろう。

ギルドマスター、この子をここで雇う事は出来ないだろうか?」



「えっ?」



「ここなら安定した収入は得られる。 また、私の名が広がればギルドも盛り上がってウィンウィンだと思うのだ。

どうだろうか?

その為に力は尽くすつもりだ」



「まあ、ミコトさんが良いなら良いわよ? あなた、文字の読み書きは出来て?」



「あっ、はい! 出来ます!」



「なら明日から頑張ってちょうだい。 背中を押してくれたミコトさんに感謝なさいね?」



「はい、本当にありがとうございます。 迷惑かけたのにこんな……うう……」



こうしてミコトはグランドワイズのギルドに通い、依頼を熟していく事で次第にミコトに憧れてハンターを始める者も出て来た。


更に、自身も功績を上げて気付けば黒になっていた。


残り2年。


既に目標であった銀色級も目の前だ。


そんな時、依頼を受けて迷い込んだ森で一人の男と出会った。


そう、センだ――

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