動き出す4人
ポセイドンと風呂で話した事を、他の3人にも伝えて良いか聞いたら「お前に任せる」なんて言うんだよ。
任された俺としては全員でどうするか考えたいんだ。
だって……子供を育てた事なんて無いからさ。
「上の兄ちゃんに色々聞いときゃ良かったな」
「爆釣は何人兄妹なの?」
朝飯食いながらボソッっと呟いたらポムに反応されてしまった。
「兄貴2人と妹が1人の4人兄妹」「おお、大家族」
ロナルディとリスティールさんは、今朝早くから山を見に行くって言って、おにぎり包んで朝からハイキングに出掛けたし、ポセイドンは色々準備するのに1度地球に帰るって言ってたから来てない。
「お爺さんと、お婆さんと、お父さんと、お母さんと、お兄さん2人と、妹さんと、爆釣……大家族だ」
「爺ちゃん婆ちゃんが住んでた家は違うぞ、俺も働き出してからは爺ちゃん婆ちゃんと一緒に住んでたし」
ポムが興味津々な目で見てくる……
「家が2つもあったの? 爆釣ってお金持ち?」
「違う違う。同じ敷地に小さい家が2軒建ってたの、上の兄ちゃんが就職するまで、自分だけの部屋なんて持ってなかったからな」
高校卒業まで妹と6畳の部屋の真ん中をカーテンで仕切って使ってた。
「上のお兄さんは一緒に住んでなかったの?」
「兄妹で1番出来が悪かったのが俺でさ。上の兄ちゃんは出来が良くて、都会に出て行って就職した」
俺の成績は……下から数えた方が早かったな。
「上の兄ちゃんの所に女の子と男の子が居るんだよ。上が5歳で下が3歳のさ。育児のコツとか聞いときゃ良かった……」
「ポセイドンの言ってたヤツ?」
やっぱりポムには伝えておこうかな。
「うん。6歳の女の子を連れて来るんだって」
「それってポセイドンのお嫁さん候補?」
ポセイドンって、ポムの中ではどんなイメージなんだろ? さすがにソレは無いよな? 無いよな……
「違うと思うぞ。ポセイドンから頼まれたのは「楽しい思い出を沢山作ってやってくれ」だったし」
「それなら大丈夫だ」
何が大丈夫なんだろ?
「私も含めて、皆楽しいはずだもん。
ポムの奴が自信満々でサムズアップ……どこから湧いてくるんだろ?
とりあえず、ある程度まとまったポイントを残しときたいから、値段の良い貝を中心に売ろうと思って午前中頑張って掘ったんだけど、やたら貝の値段が下がってんだ……
「数日前と比べると一気に貝の値段が落ちたな……」
「こっちの買い取り価格は安定してるよ」
日本とポムの世界とじゃ相場が色々違うみたいで、ポムの世界の方で買い取って貰って、相場が安定するまで日本側に売るのは少し控え目にしようって2人で決めた。
「色々と値段が違うけど、なんだかんだでボブの買取額がやばいな……徐々に上がってない?」
「だって今からが時期だもん。冬を迎えるまでが美味しい時期だよ」
なるほどな、旬のボブは高いのか……今日のボブの平均相場が1kg8000ポイント……高い……
午前中で200kgくらいアサリ、ハマグリ、ミル貝、トコブシを売って昼飯食ってたら、俺のスマホに久々のメールが来た。
「おっポセイドンからだ。受信出来るんだな……」
メールを開くと、女の子の写真とプロフィールが書いてあって……タイミングを見計らって連れて行くから、しばらく
「ポムだったら、お腹ペコペコで困ってる時は何が食べたい?」
「2週間くらい雑草しか食べれなかった後に、いきなり魚を食べたらお腹痛いくなったから……お腹に優しい物かな……」
お腹に優しい物か……
「なあ、
「怪我とか病気には万能の薬だよ。死んでさえ無ければ体が半分に千切れてても治っちゃうんだから」
すげえ……そんな野菜を毎日食べてるよ俺達……
「んじゃ
午後は
色々料理を試作してみる前に、ロナルディとリスティールさんに、畑から色々野菜を持ってくって伝えて、
「ちょっと爆釣さん! 世界樹ですよ! なんでそんな量持って行くんですか!」
2個もぎ取っただけなのに……普段なら葉っぱ単位で千切ってるもんな……怒られるか。
「30株くらいあるんだし良いじゃん。緊急事態なんだよ。種なら100個買ったから、そっちを渡すし我慢してくれ」
そこそこ痛い出費だったけど、文句言われるのは分かってたから種を買っといた。
「何があったんです?」「緊急事態……ですか?」
うん、やっぱり2人にも伝えとこう。
「衰弱して弱った子供が近々地獄ここに来る。その時の為に子供にも食べ易い
「健康にして、いっぱい甘やかして。楽しい思い出を沢山作ってあげないとなの」
俺とポムの全く足りてない説明でも、何かを察してくれた2人……
「野菜の苦手な子供でも美味しく食べられる味の野菜を作らないとですね」
「美味しい野菜を作るなら栄養満点の大地から作らないと! ロナ、こうしちゃ居られないわ、果物も沢山作りましょ」
2人が急に張り切り出して……
「味しく飲める飲み物も必要だ」って言って、リスティールさんが肩に掛けてた鞄から変な形の桃を1つ取り出した。
「とっておきを使っちゃいましょう」
「うわ!? それって……」
「リスティ……盗んで来たのか?」
ポムとロナルディが凄い驚いてる……変な形をした桃なのになんで?
「爆釣、あれって凄い希少な果物なんだよ」
「種があるなら1個で数十万ポイントはします……」
なんだそりゃ?……
「木神様から、結婚祝いに貰ったんです。ロナと見た目年齢を合わせたいなら食べなさいって」
美容と健康にでも良いんだろうか?
「爆釣、アレは1個食べると10歳若返る凄く希少な果物なの。どんな世界に持って行っても女神達の戦争の種になるほどにね」
「なんじゃそりゃ? 果物で戦争? 馬鹿げてんな……」
馬鹿げてんなって言ったら、女性2人から睨まれた……なる程な……女性だったら若返るとか……
「それもロナルディの植物操作で大きく出来んの?」
「僕の力では若返る効果の無い種無しを生らせるので精一杯です」
種無しって食べやすくて良いじゃん。
「んじゃ頑張って。俺は今日から仕事と料理を頑張るから」
あれ? 何時も頑張ってるような…………
頑張ってるって言う程でも無いような…………
「いつも通りの爆釣じゃん」「だな」
大きく千切ってサラダにすると少し苦いから子供だったら苦手だろうなって思って、小さく刻んでポテサラに混ぜてみたり、火を通してしんなりさせてみたり、甘辛く味付けした豆腐ハンバーグに混ぜ込んでみたり、色々試したけど、どれも今一つ納得いかない。
「どれを食べても、そこそこ美味しいよ」
「お店で出て来ても納得な味だと思うのですが……」
「お酒には合わないですが、パンと一緒に食べるのなら美味しいと思いますよ」
違うんだよ……子供の舌を満足させるってのはそんな簡単じゃない。
「違うんだ。今だと見た目がどう見ても大人用じゃん。こう……なんつーか……お子様ランチみたいなさ」
見た目から楽しんで貰わないと……
「お子様ランチ?」「それは一体?」「子供用の食事ですか……」
スマホを拡大して、お子様ランチの画像を検索して3人に見せてみた。
「なる程、玩具も必要なんですね。それなら私が作ります。こう見えてもドワーフですから」
髭が無くなってから、小柄な女性にしか見えないリスティールさんが玩具担当……
「僕は……もっと色鮮やかなフルーツを作ってみます。見た目から喜んで貰わないと」
「んじゃ私は爆釣の作った試作品の試食を担当しようじゃないか」
ポム…………それは皆で……いや……別にいっか。
「最初に食べさせる物は、出来るだけお腹に優しい食べ物にするけど、元気になって来たら毎食が楽しんで貰えるように頑張るぞ」
ちくせう……こんな時に料理人なポセイドンが居てくれたら、色々アドバイスしてもらうのに……
「ポセどんをビックリさせてやろ」
「だな。ここに連れて来て良かったって思わせてやろうぜ」
「私達も色々と準備しますね」
「4人で頑張りましょう」
4人とも子育てなんかした事ないから、まずは子育てのコツを覚えるのに、スマホで育児の勉強からだな。
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